5.会社の設立

会社法の規定によって設立された、営利を目的とする法人のことを会社という。
※ 人間ではないけれど、法律上特別に人と同じく扱えるよう法人格が与えられたもの法人という。

会社には、営利性(お金儲けをして儲かったお金をみんなで分ける)と法人性(会社名義で不動産を所有したり、お金を借りたりすることができる)がある。
※ 会社は、事業目的を定めていて、その範囲の中で法人格が与えられる。

~ 株式会社 ~
多くの人から出資を受け大規模経営をしたい場合に適した会社形態。
※ 現在は、有限会社を新設することはできなくなった。ただし、会社法施工前から存在していた有限会社は、そのまま有限会社の名称を使い続けることは可能。

~ 持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)~
無関係な人に口を出されず、仲間うちだけで商売をしたい場合に適した会社形態。


〈間接有限責任〉
X社にAが50万円を出資して10株取得したが、X社が1億円の負債を抱えて倒産した場合、X社の株主だからといって、会社債権者に対して、会社の債務を弁済する(直接の)責任を負わないリスクを限定することで出資しやすい環境ができる。責任は引受価額だけなので有限責任となる。


〈資本金〉
会社財産を確保するための基準となる一定の金額のことを資本金という。
※ 会社が発行する株式の対価として支払われた金額の総額
※ 会社法では、会社債権者保護のため、会社に一定の財産は残るようにしておくための規制を設けているのが、資本金制度。「資本金維持の原則」という。
※ 資本金はいくらでもよいが、その額に相当する財産が現実に会社に出資されていなければならない。
※ いったん定めた資本金の額を減少させる場合株主総会の特別決議を経ることや、債権者に異議を述べる機会を与えることなどの手続きが要求されている
※ 昔は株式会社を設立するには資本金は最低1000万円が必要とされていたが、現在はこのような最低資本金制度は廃止されている。


〈所有者と経営の分離〉
会社に出資した株主が、その会社の所有者となる。会社の所有者である株主が、会社経営者である取締役を選任し、取締役に経営を任せている。
※ 重要事項は、株主総会(所有者)で決め、通常の経営事項は取締役会(経営者)で決める。


〈公開会社と非公開会社〉

株式の譲渡は自由であることが原則。会社は、株式の譲渡に会社の承認を必要とする形で制限をかけることもできる。
※ 譲渡自由な株式を発行している会社を公開会社とよぶ。(出資を通じて多くの人が関わるので会社法でルールが厳しく設定されている。)
※ 譲渡に制限をかけている会社を非公開会社とよぶ。(身内だけの会社なのでルールがゆるくなっている。)


〈会社設立〉

①定款の作成・認証 ②出資の履行 ③設立時取締役等の選任 ④設立登記 

発起人のみの出資会社を設立する場合のことを発起設立という。
発起人発起人以外の物の出資会社を設立する場合を募集設立という。
※ 発起設立・募集設立いずれの方法でも、各発起人は最低1株以上は引き受けなければならない。(25条2項)
※ 創立総会は、募集設立のときだけ開催が必要(65条1項)
(創立総会は、株式を引き受ける者で構成される設立中の会社の意思決定機関。株主総会ができるようになるまでの間の意思決定の場となる。)


〈定款の作成・認証〉
会社の組織・活動を定めた会社の骨組みとなる基本ルールのことを定款という。
※ 発起人は、まず定款を作成し(26条1項)、公証人の認証を受けなければならない。(30条1項)公証人の認証を受けることで、定款は効力を生じる。(この定款のことを原始定款という。)
※ 公証人とは、公正証書の作成や、その他の証書に必要とされる認証を与える権限を有する公務員のこと。

~ 定款の絶対的記載事項 ~ (27条1号~5号、37条)
①目的 ②商号 ③本店の所在地 ④設立時に出資される財産の価額またはその最低額 ⑤発起人の氏名・名称および住所 + ⑥発行可能株式総数
※ 絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない事項で、記載を怠るとその事項のみならず定款自体が無効となるもの。
※ 資本金は資本金は登記事項だが、定款に記載する必要はない。
※ 発行可能株式総数は定款に記載するが、設立時株式総数は定款に記載する必要はない。

※ 発行可能株式総数は、原始定款に定めておかなくてもよく、定める場合は会社成立の時までに、定款を変更すればよい。(発起設立の場合は、発起人全員の同意で変更し、募集設立のときは、払い込み期日後は創立総会決議で変更する。)
※ 公開会社の場合、設立時発行株式総数は、発行可能株式総数の4分の1を下回ってはならない。(37条3項)(設立時発行株式が200株なら、発行可能株式総数として定款に記載できるのは800株が最大値となる。)(4分の1ルールは公開会社の場合のルール。)


〈出資の履行〉
発起人は、発起人全員の同意により発起人が割り当てを受ける設立時発行株式の数などを定め、出資の履行をする。(32条1項)出資に係る金銭の振込は、発起人が定めた振込取扱場所(銀行等)において行う必要がある。(募集設立の場合、払込取扱機関が払込金の保管証明義務を負う。(64条1項)発起設立の場合はこの規定はない。)
※ 発起人は、会社設立後に、設立時発行株式の引受について、錯誤、詐欺、強迫を理由に取消しをすることはできない。
※ 実際に株主になるのは、お金を払い込んだ日ではなく、会社が設立してから。

※ 通常、株式の払込金額が資本金となるが、その2分の1までの額は、資本金として計上しないことが認められている。(445条1項2項)資本金として計上しなかった金額は、資本準備金として計上する。(445条3項)(1200万円集まっても、資本金を1000万円にし、資本準備金を200万円とすることもできる)
※ 1000万円を集める予定で出資者を募ったが、900万円しか集まらなかった場合、発起人の引受担保責任はないため、発起人が差額の100万円を負担しないで、資本金900万円で会社を設立してよい。(昔は、発起人の引受担保責任があったが、現在は法改正で廃止されている。)


〈出資の不履行〉
発起人の中に出資を履行しない者がいる場合、他の発起人は、失権予告付の催告をし、それでもなお履行しない時は、その発起人は失権する。(36条)
募集設立の場合、発起人以外の引受人が所定の期日までに履行しない場合、その者は当然に失権する。(63条3項)


〈設立時取締役〉
発起設立の場合は、発起人が、設立取締役を選任する。(38条1項)
募集設立の場合は、創立総会の決議で、設立時取締役を選任する。(88条1項)
※ 設立時取締役設立課程の調査をする。発起人設立手続を執行する
※ 設立時取締役の選任は、発起人全員の同意ではなく、発起人の議決権の過半数で行われる。(40条1項)
※ 創立総会決議には、株主総会にあるような反対株主の株式買取請求の仕組みはない。


〈設立登記〉
最後に会社の本店所在地において設立登記申請をする。登記により会社として法人格を取得し、会社が成立する。(49条)


〈設立無効の訴え〉
会社の設立登記はされているけど実際には設立の要件を満たしていなかった場合、会社の設立を無効にできるが、この場合、設立無効の訴えによらなければない。(828条1項1号)設立無効の訴えは、提訴権者が株主取締役等に限定され、提訴期間も会社設立日から2年以内、無効判決が出されても将来に向かって無効となる。


〈発起設立と募集設立の違い〉
1.発起人による出資:  発起設立、募集設立、ともにあり
2.発起人以外の者による出資:  発起設立はないが、募集設立にはある
3.創立総会の開催: 発起設立のときは不要だが、募集設立のときは必要
4.設立時取締役の選任: 発起設立のときは、発起人が選任(議決権の過半数で決する)、募集設立のときは、創立総会で選任(設立時株主の議決権の過半数で、かつ出席した当該株主の議決権の3分の2で決する)
5.発起人の未払い:  発起設立も募集設立も、ともに失権予告付催告後履行がなければ失権する。
6.発起人以外のものの未払い: 発起設立には該当人無で、募集設立のときは当然に失権する
7.払込取扱機関保管証明義務:発起設立の時はなく、募集設立の時はある
8.発起人の引受担保責任: 発起設立、募集設立、ともになし


〈変態設立事項〉
発起人の自由に任せると、その権限を濫用して会社の財政的基礎を危うくするおそれがある事項のことを変態設立事項という。


~ 現物出資(変態設立事項その1)~
金銭以外の財産で行う出資のことを現物出資という。
会社の設立時に発起人は、現物で出資することもできる。(登記、登録、その他権利の設定または移転を第三者に対抗するために必要な行為は、発起人全員の同意得て、会社の設立後にできる。:34条1項ただし書)

〈現物出資の規制の必要性〉
財産の過大評価をしないで財産の評価が適正に行われるように、現物出資には規制がある。
※ 過大評価があると、資本金が満たされていない状態になったり、配当が不公平になったりするので、規制を設けてある。

〈現物出資をするときのルール〉
1.定款に記載する(28条1号)(現物出資者の名前、その財産、評価額、割り当てる株式の数を記)
※ 現物出資と財産引受の場合、定款で定めた価額が500万円を超えないとき、市場価格のある有価証券のとき、弁護士の証明があるときは、検査役の調査は不要になる。(33条10項)
2.検査役調査を受ける(33条1項)(検査役は、会社設立手続においては現物出資などの調査を職務とする者のことで、裁判所によって選任される。)

〈不足額支払責任〉
現物出資の目的財産について、会社設立時における価額定款に定めた価額に著しく不足する場合、発起人設立時取締役等と連携してその不足額を支払う義務を負う。(52条1項)(この責任は、会社に対する責任なので総株主の同意があるときは免除することができる。)


~ 財産引受(変態設立事項その2)
会社の設立を条件にして、会社が特定の財産代金を支払って譲り受ける契約のこと。目的財産の過大評価がないように、その財産、その価額譲渡人の名前定款に記載し、検査役の調査を受けることが必要。(28条2号、33条1項)
※ 譲渡人は発起人でなくてもよい。


~ 発起人の報酬・特別利益(変態設立事項その3)~
発起人会社設立職務の対価として受け取る報酬、その他の特別利益のこと。
会社の設立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益、その発起人の名前定款に記載検査役の調査を受けることが必要。(28条3号、33条1項)


~ 設立費用(変態設立事項その4)~
会社の負担する設立に関する費用のこを設立費用という。会社の設立者(発起人)が、会社が設立される前に立て替えていた費用(賃借料や印刷代など)を設立後に会社に請求する場合、会社の負担する設立に関する費用を定款に記載し、検査役の調査を受けることが必要。(28条4号、33条1項)
※ 定款認証の際の手数料や登記の際の登記免許税といった過大評価のおそれがないものは、変態設立事項には含まれない。


〈発起人の責任〉

~ 会社が成立した場合の発起人の責任 ~

1.任務懈怠責任(にんむけたいせきにん)
 発起人が任務懈怠(与えられた任務を誠実に行わないこと)によって会社に損害を与えた場合、その損害を賠償する責任を負う。(53条1項)
※ 総株主の同意があれば、免責されることがある

2.対第三者責任
 発起人が職務を行うにつき悪意または重過失によって第三者に損害を与えた場合、その損害を賠償する責任を負う。(53条2項)
※ 総株主の同意があっても、免責することはできない

3.仮装払込みの責任
発起人が出資の履行を仮装した場合、当該発起人は、会社に対し払込みを仮装した出資に係る金銭の全額の支払いをする義務を負う。(52条の2第1項)
※ 仮装振込みをした発起人が、注意を怠らなかったことを証明しても免責されない
※ 仮装出資に関与した発起人は、仮装に係る金銭の支払い義務はあるが、注意を怠らなかったことを証明したら免責される


~ 会社不成立の場合の発起人の責任 ~
 会社が不成立の場合、発起人は、会社の設立に関して行った行為について連帯して責任を負い、また、会社の設立に関して支出した費用は、発起人の負担となる。(56条)
※ 任務懈怠責任や第三者に対する責任は発起人のほか、設立時取締役等も責任を負う(53条)。一方、会社不成立のときの責任は発起人のみが負い設立時取締役等にはこの責任は生じない。(56条)


~ 疑似発起人の責任 ~
 募集設立の場合、発起人でないのに株式募集の広告その他株式募集に関する書面に自己の氏名・名称および会社の設立を賛助する旨の記載をすることを承諾した者は、発起人とみなされ発起人と同一の責任を負う。(103条4項)

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