会社への出資は、株式という単位に応じて行われる。
※ 株主は、その保有する株式の内容および数に応じて平等に取り扱われる。(株主平等原則、109条1項)
1株5万円の株式を200株発行しており、1000万円の経済的価値がある会社Xに、株主Aは50万円出資(10株保有)、株主Bは25万円出資(5株保有)している。
※ 1株につき100円の配当・1票の議決権が認められている場合
⇒ 10株保有しているAは、1000円の配当、10票の議決権があり、
5株保有しているBは、500円の配当、5票の議決権がある。
~ 株主の権利 ~
1. 自益権
(会社から経済的利益を受けることを目的とする権利:余剰金配当請求等)
2.共益権
(会社の経営に参加する権利:株主総会の議決権:1株1票)
~ 株主名簿 ~
会社は、株主名簿を作成する。(121条)
※ 株主の氏名・住所、その有する株式の数、株主が株式を取得した日などが株主名簿記載事項にあたる。(121条)
〈株式の譲渡〉
~ 譲渡制限株式 ~
株式は、株式を自由に譲渡できることが原則。(127条)
会社は、定款で会社の承認が必要な旨を定めることによって譲渡に制限をかけることができる。
取締役会設置会社が定款で株式の譲渡にX社の承認を必要とする旨を定めている場合。
※ X社の株主AがX社に株式の譲渡承認請求をする場合、X社の取締役会に単独で請求することができる。(承認機関は定款で変更可能。取締役会を設置していない会社の場合は、株主総会が承認期間になる:139条1項)
※ X社の株主Aから譲渡を受けるBが、X社に株式の譲渡承認請求をする場合、株主Aと共同してX社の取締役会に請求することができる。
※ X社が譲渡承認請求を拒むときは、X社が株主総会特別決議を経て、X社が買い取ることができる。または、取締役会決議を経て、指定買取人を指定してもよい。
※ 株主AがX社に無断でBに譲渡したとき、X社に対してその譲渡は無効だが、AB間においては有効となる。
※ 譲渡承認請求は、売買のような特定承継が対象で、相続のような一般承継は対象ではない。会社は、相続その他の一般承継により当該会社の譲渡制限株式を取得を取得した者に対し、その株式を会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができる。(174条)
※ 会社が承認も拒否もしないで返答しない場合、承認決定があったものとみなされる。(145条)
~ 全部の株式に譲渡制限をかける場合の特殊決議 ~
発行する全部の株式に譲渡制限を新たに設ける定款変更をする場合、株主総会の特別決議では足りず、特殊決議が必要。
1000株の株式を発行しているX社の株主総会に、株主A~Eの5人全員が出席した場合。
A:550株、B:150株、C:100株、D:100株、E:100株
※ 普通決議の場合、議決権の過半数で可決されるため、A一人が賛成すれば可決される。
※ 特別決議の場合、議決権の3分の2以上が必要になるため、ABの2人が賛成すれば可決される。
※ 特殊決議の場合、株主の半数以上と議決権の3分の2以上が必要になるため、ABCの3人が賛成すれば可決される。この場合、反対株主のD・Eには株式買取請求権が認められる。(116条1項1号)
~ 子会社による親会社株式取得の禁止 ~
子会社は、原則として、親会社の株式を取得することはできない。(135条1項)例外的に子会社が親会社の株式を取得できる場合(他の会社を吸収合併した場合等)でも、子会社は、取得した親会社株式を相当の時期に処分しなければならない。(135条3項)
~ 特別支配株主の株式売渡請求 ~
特別支配株主(総株主の議決権の10分の9を有している株主)は、株式売渡請求に係る株式を発行している対象会社の他の株主の全員に対し、その有する当該対象会社の株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すよう請求することができる。(179条1項本文)
特別支配株主は、株式売渡請求をしようとするときは、対象会社に対し、その旨および対価として交付する金銭の額や売渡株式を取得する日等一定の事項を通知し、その承認を受けなければならない。(179条3第1項)取締役会設置会社の場合、承認するか否かの決定は取締役会による。(179条3第3項)
〈自己株式〉
会社は自社の名義で自社の株式を取得・保有することも可能。
※ 会社が自己株式を取得したり、処分したとしても発行済み株式総数が減少するわけではない。会社が株式消却(自己株式を消滅させる行為)することで自己株式は消滅する。(178条1項)
取締役設置会社であるX社が、AからX社の株式を自社で取得する場合。
※ 全株主に申込み機会を与えて取得する場合、株主総会決議を経る必要がある。(会計監査人設置会社では、取締役会が定めることができる旨を定款で定めることが可能となる場合がある。:459条1項1号)
※ 特定の株主にだけ申込み機会を与えて取得する場合、株主総会特別決議を経る必要がある。
※ 子会社から取得する場合、取締役会決議を経る必要がある。(子会社の場合、親会社株式を取得したときは、相当の時期に処分しなければならないとする規定があるが、自己株式の保有期間に制限はない。)
※ 市場取引で取得する場合、株主総会決議を経る必要がある。定款で取締役会決議でよいとすることも可)
※ 自己株式には株主総会の議決権や余剰金の配当請求権はない。(X社が自分の会社の株主総会において自分で票を入れたり、自分で自分に配当することはできない。)
~ 財源規制 ~
自己株式の取得には財源規制がある。自己株式取得のために支払うことができる額は分配可能額を超えることはできない。(461条1項)(反対株主の株式買取請求はこの規制の対象外)
~ 株式消却 ~
株式消却は、会社が自己株式を消滅させ、発行済株式総数を減少させることをいう。(178条1項)取締役会株式会社の場合、取締役会で決定する。(178条2項)(自己株式を消却した場合、その株式が消滅するので発行株式総数は減少するが、自己株式を処分した場合、株式の名義人が変わるだけで発行株式総数は減少しない。)
〈出資単位〉
資本金1000万円の会社を設立する場合。
※ 1株10円の株を100万株売る場合、株式は売りやすくなるが、株主管理コストがかかる。
※ 1株250万円の株を4株売る場合、株式は売りずらくなるが、株主管理コストはかからない。
取締役会設置会社であるX社が、株式併合・株式分割する場合。
~ 株式併合 ~
数個の株式を合わせて、発行済株式総数を減少させることを株式併合という。2株を1株にするときは、500万円出資している人は、1万円の株を500株持っていたところが、2万円の株を250株持っていることになる。
※ 株式併合をするには、株主総会で特別決議を経る必要がある。この株式併合は、自己株式も対象となる。
※ 端数が生じている場合、反対株主には併合により1株に満たない端数となる株式を買い取るよう会社に請求できる権利が認められている。(182条の4第1項)。株式分割の場合は、このような規定はない。
~ 株式分割 ~
株式を細分化して発行済株式総数を増加させることを株式分割という。1株を2株にするときは、500万円出資している人は、1万円の株を500株持っていたところが、5000円の株を1000株持っていることになる。
※ 株式分割をするには、取締役会決議を経る必要がある。この株式分割は、自己株式も対象となる。
~ 単元株制度 ~
会社は、定款で定めた一定数の株式をまとめたものを1単元とし、1単元の株式には1議決権を認めるが、単元未満株式には議決権を認めないとすることもできる。(188条1項)(出資しやすくして、株主総会の招集通知などにかかるコストを削減できる。)
取締役会設置会社であるX社は、100株を1単元とし、100株につき1議決権を認めている。70株保有の株主Aは、議決権を持たず、200株保有の株主Bは、2票の議決権を持っていることになる。
※ 単元株制度を新設するには、株主総会特別特別決議を経て、定款を変更しなければならない。
※ 単元株制度を廃止するには、取締役会決議を経て、定款変更をしなければならない。
※ 単元株未満の株主の権利としては、余剰金の配当請求権や、定款で定められていなくても法律で認められている権利である株式買取請求権(Aはあと70株はいらないから買い取って欲しいと言える)、定款で定めた場合は株式売渡請求権(Aはあと30株で1単元になるから30株売ってほしいと言える)がある。
〈新株発行〉
会社設立後、さらに会社が資金を調達する必要が生じた場合、新しく株式を発行して、出資を募り、資金を調達することができる。
取締役会設置会社であるX社が資金調達のために第三者割当の方法で出資者を募集して新しく株式を発行する場合。(第三者割当てとは、既存の株主に持株数に応じて割り当てるのではなく、特定の第三者、例えば、会社の役員、従業員、取引先などに割り当てる方法)
※ 200株を発行しているX社が、通常より特に安い価格で新しく200株有利発行して第三者が引き受けた場合、X社は400株発行していることになり、120株を保有している株主Aは、X社における支配率が下がり、A保有の経済価値が下がることになり既存株主Aにとっては不利益となるので承認決議が必要となる。
~ 第三者割当による募集株式発行の承認決議 ~
※ 第三者割当てによる募集株式発行をするときは、公開会社の場合は、通常の株式発行のときは、取締役会決議を経る必要があり、有利発行の場合には、株主総会特別決議を経る必要がある。(資金調達の便宜を優先)
(公開会社の場合通常の株式発行のとき取締役会決議でよいとされているのは、経営上の判断から迅速な資金調達を可能とするためである。定款に定めがある発行可能株式総数の範囲内であれば、取締役会の判断で新しく株式を発行でき、このような制度を授権資本制度という。)
※ 第三者割当てによる募集株式発行をするときは、非公開会社の場合は、通常の株式発行のときも、有利発行のときも、株式総会特別決議を経る必要がある。(既存株主の保護を優先)
〈新株予約権〉
新株予約権は、会社に対して行使することにより当該会社の株式の交付を受けることができる権利。会社は、新株予約者に対して、株式を交付することになる。
※ 募集に応じて新株予約権の引受けの申込みをした者に対して割り当てられる新株予約権は、募集新株予約権という。
※ 株価が上がれば権利を行使して安く株式を取得できるし、株価が下がれば権利を行使しないこともできる。
※ 新株予約権も権利なので、それ自体も譲渡の対象となる。
7月1日現在株価700円のX社があり、株主Aが7月10日に10,000株分のX社の新株予約権の引き受けを申込み、7月12日に払込みをすることを約して7月10日に割り当てを受けた。当該新株予約権は8月31日までに600円を払えばX社の1株を取得できる権利である場合、株主Aが、8月25日に600万円払込めばX社の株を1万株取得できる。
※ Aが新株予約権者になる日は、予約権の割当日である7月10日。(お金を振り込んだ7月12日ではない。)
※ 新株予約権では、新株予約権を購入するお金と、実際に出資するお金が必要。(予約権を一株分10円で購入し、実際に出資を決めたら1株600円で出資して株式を取得する。)
※ 新株予約権を発行しただけでは会社の資本金は増加せず、実際に新株予約権が行使されて出資されたときに会社の資本金が増加する。
〈差止め請求〉
新株予約権の発行が法令・定款に違反する場合、または著しく不公正な方法で行われ、株主が不利益を受けるおそれがある場合は、会社に対して、新株予約権の発行をやめるように請求することができる。(247条)
〈新株予約権付社債〉
新株予約権付社債は、新株予約権と社債が一体化したもの。社債の保有者として利息収入を得ることができ、会社の業績がよければ、新株予約権を行使して株主となることができる。(社債だけを分離して譲渡することはできない。)
〈権利の内容が異なる株式〉
株式の内容は会社法によって自動的に決まる。
定款で定めることにより、発行する全部の株式について、会社は、株式の内容を特別なものにすることもできる。1種類の株式だけを発行することが認められているのは以下の3つの種類の内容の株式だけ。(107条1項)
※ すべての株式について議決権を制限する内容がある株式の発行をすることは認められていない。
① 譲渡制限のある株式だけの発行
譲渡による当該株式の取得について当該会社の承認を要することができる権利の内容がある株式だけを発行すること。
② 取得請求権付の株式だけの発行
当該株式について、株主が当該会社に対してその取得を請求することができる権利の内容がある株式だけを発行すること。
③ 取得条項付の株式だけの発行
当該株式について、当該会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができる権利の内容がある株式だけを発行をすること。(通常、定款変更は株主総会の特別決議でできるが、取得条項付の株式の発行に関する定款変更は株主全員の同意によって行うものとされている。:110条)
〈種類株式〉
会社は、権利の内容が同じ株式しか発行できないわけではなく、定款で定めることにより、権利の内容の異なる複数の種類の株式を発行することもできる。(108条1項)(通常発行されている株式の内容とは異なる内容の2種類目の株式を発行することもできる)
※ 会社法上、発行可能な種類株式は9種類に限定されている。
1.余剰金の配当について内容の異なる株式を発行できる権利内容がある株式
(配当の多い方の別の種類の株式は、優先株と呼ばれる。)
2.残余財産の分配について内容の異なる株式を発行できる権利内容がある株式
3.株主総会において議決権を行使することができる事項を制限できる権利内容がある株式(議決権制限株式)
(決議事項の全部について議決権を有しないとすることもできる。)
※ 議決権制限付き株式は、優先株式とセットにして発行されることもあるが、セットにしなくてはならないわけではない。)
4.譲渡による当該種類の株式の取得について当該会社の承認を要する権利内容がある株式(譲渡制限株式)
※ 公開会社でも種類株式として譲渡制限付株式を発行できる。
5.当該種類の株式について、株主が当該会社に対してその取得を請求することができる権利内容がある株式(取得請求権付株式)
6.当該種類の株式について、当該会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができる権利内容がある株式(取得条項付株式)
7.当該種類の株式について、当該会社が株主総会の特別決議によってその全部を取得することができる権利の内容がある株式(全部取得条項付株式)
8.株主総会で決議すべき事項のうち、当該株主総会の決議のほか、当該種類の株式の種類株主だけを構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とする権利の内容がある株式(拒否権付株式)
9.当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役等を選任する権利の内容がある株式(取締役・監査役選任権付株式)
※ 取締役・監査役選任権付株式の発行が可能なのは非公開会社だけ。公開会社では認められていない。)