7. 株主総会

公開会社とは、取締役会設置会社のことをいう。

非公開会社には、取締役会設置会社取締役会非設置会社がある。

※ 株式譲渡が自由な株式を発行している会社公開会社譲渡制限をしている会社非公開会社
※ 327条1項では、取締役会を置かなけらばならない会社は、1.公開会社、2.監査役会設置会社、3.監査等委員会設置会社、4.指名委員会等設置会社である旨が規定されている。
※ 夫婦2人で経営する小さな会社など取締役はいるけど、取締役会は置かない会社形態もある。


〈公開会社と非公開会社のルールの違い〉

取締役を自社の株主の中からしか選任できないと制限することは、公開会社の場合はできないけれど、非公開会社の場合はできる

〈取締役会設置会社と取締役会非設置会社のルールの違い〉

株主総会決議事項会社法と定款に記載されている事項に限定されるかどうかの規定は、取締役会設置会社の場合は限定されるが、取締役会非設置会社の場合は限定されない


〈株主総会〉
会社の組織変更定款変更などの重要事項を決定する機関のことを株主総会という。株主総会は、株主によって構成されている。


〈株主総会の権限〉

取締役会設置会社では、株主総会で、会社法と定款で規定された事項のみ決定できる。(295条2項)
※ 取締役会決事項を定款で株主総会決議事項にすることはできるが、株主総会決議事項を勝手に定款で取締役会決議事項にすることはできない。(295条3項)

取締役会非設置会社は、会社に関する一切の事項を決定できる。(295条1項)


〈株主総会の招集〉
 株主総会を開催するときは、会社から招集通知が送付されてくるので、株主は、それを受け、当該期日に株主総会の会場に向かえば参加できる
※ 会社または総株主の議決権の1%以上の議決権を有する株主は、株主総会に係る招集の手続および決議の方法を調査させるため、当該株主総会に先立ち、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをすることができる。(306条1項)
※ 招集権者は取締役だが、公開会社の場合、6か月前から3%以上を有する株主は、取締役に対して株主総会の招集を請求でき、それにもかかわらず株主総会が招集されないときは、裁判所の許可を得て、自ら株主総会を招集できる。(297条1項・4項)

 公開会社であるX社(取締役会設置会社)の株主総会をするために、X社が株主に招集通知をした場合。

定時株主総会毎事業年度の終了後一定の時期に招集される株主総会のこと:296条1項)

臨時株主総会臨時の必要に応じて臨時招集される株主総会:296条2項)

※ 取締役は、株主総会の日の2週間前までに、株主に対して通知を発しなくてはならない。(299条1項)
※ 株主総会は、株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。(300条)(書面投票・電子投票制度がある場合は全員同意による招集手続の省略は不可)
※ 通知は書面で行い(299条2項)、株主総会で決議できる事項招集通知記載された株主総会の目的事項に限定される。(309条5項、298条1項2号)


〈株主総会資料の電子提供〉
会社は、株主総会資料Webサイトに掲載し、株主に対してそのアドレス書面で通知する方法により、株主総会資料を株主に提供することができる。(325条の2)書面での資料提供を希望する株主は、書面の交付を請求することができる。(325条の5第1項)(株主総会資料の電子提供制度は、令和4年9月施行の法改正により、新しくできた制度)


〈株主総会決議〉
※ 株主総会に出席しない株主書面によって議決権を行使する制度を「書面投票制度」という。(311条1項)
※ 議決権を書面で行使した株主でも、その後実際に株主総会に出席して議決権行使した場合、書面による議決権行使の効力は失われる
※ 普通決議では、定款定足数を加重・軽減することができ、廃止することもできる。(取締役の選任の場合など、自由な変更が認められないものがある。)
※ 特別決議では、定款で定足数の加重はできるが、軽減は下限3分の1を限度にできるのみ。

~ 普通決議 ~
議決権の過半数
を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数をもって行われる決議(309条1項)

~ 特別決議 ~
議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の多数をもって行われる決議(309条2項)(例えば、定款の変更会社の合併事業の全部の譲渡会社の解散のなどが特別決議が必要。)

例)1000株発行、株主5人全員出席
A: 550株  B: 150株  C: 100株  D: 100株  E: 100株
普通議決だと、Aが賛成したら、議決権の過半数で可決なので、可決
特別議決だと、AB賛成で、議決権の3分の2以上が可決には必要なので、可決

※ 株主総会の目的である事項についての提案に対し、議決権を有する株主全員が同意すれば、その提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。(319条1項)

~ 議決権 
株主総会では、原則として1株1議決権のルールに基づいて議決権を行使する。
会社は、基準日を定めて当該基準日において株主名簿記載・記録されている株主を、株主総会において議決権を行使することができる者と定めることができる。(124条1項)

3月31日を基準日としているX社が6月25日に実施する株主総会を実施するために、3月31日時点での株主を招集した場合。
※ 代理権による議決行使はできる。(310条1項)(代理権の授与は株主総会ごとにする必要がある。)(会社が代理人資格を自社の株主に限ることは可能:最判昭43.11.1)
※ 自己株式による議決権行使はできない。(308条2項)
※ 相互保有株式(X社がY社の25%以上の株式を保有し、Y社にX社の株式を保有させておく場合のY社が保有するX社の株式のこと)による議決権行使はできない。(308条1項)
※ 基準日後に株式を取得した者による議決権行使はできない。(124条1項)(会社から、基準日株主の権利を害することがない範囲であれば、当該基準日後に株式を取得した者を株主総会における議決権を行使することができる者と定めることができる。)

~ 議事録 ~
株主総会の議事については、議事録を作成する。(318条1項)
※ 株主は、会社の営業時間内は、いつでも議事録の閲覧を請求できる。(318条4項)

~ 反対株主の株式買取請求 ~
株主総会の議決の際、反対した少数派の株主は、会社に対して株式の買取りを請求する権利が認められている。
※ 株主の株式買取請求権は、実質的には出資の払戻しになってしまうため、当然に認められるわけではなく、会社法に規定がある場合に限定される。
※ 事業譲渡における株主総会特別決議の場合には反対株主の株式買取請求権が認められているが、資本金の減少の株主総会特別決議の場合など、これが認められないこともある

X社が事業の全部をY社に譲渡するにあたり、株主Aが株主総会で反対したが、賛成多数で可決した場合、反対した株主Aは、X社に株式を買い取ってもらえる

~ 株主総会の瑕疵 ~
株主総会の決議内容決議方法法令・定款に違反しているときは、無効や取消しの原因となる。

※ 取消原因
① 株主総会の招集手続または決議方法法令・定款に違反し、または著しく不公正なとき。
② 株主総会の決議内容定款に違反するとき。(決議内容法令に違反しているときは無効
③ 株主総会の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき(831条1項)

※ 提訴権者 ⇒ 取締役監査役株主(単独株主権なので株主であれば提訴できる。3%保有などの要件はない。)(会社の債権者は、取消の提訴権者ではない。)

※ 提訴期間 ⇒ 決議の日から3か月以内

※ 裁量棄却 ⇒ 株主総会の招集の手続または決議の方法が法令・定款に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、その請求を棄却することができる。(831条2項)(裁量棄却は取消しの訴えでは認められることがあるが、無効確認の訴えでは認められない。)


〈判例〉

※ 招集権者による株主総会の招集の手続を欠く場合であっても、株主全員がその開催に同意して出席した総会(全員出席総会)においてされた決議は、株主総会の決議として有効に成立する。(最判昭60.12.20)(招集手続の不備という瑕疵が全員の出席により治癒されたと考える。)
※ 株主総会において議決権を行使する代理人を株主に限る旨の定款の規定は、株主総会が第三者により攪乱されることを防止して、会社の利益を保護する趣旨に出た合理的理由による相当程度の制限であって、有効である。(最判昭和42.9.28)
※ 株主総会決議取消しの訴えを提起した場合、その提訴期間が経過した後に新たな取消事由を追加して主張することはできない。(最判昭51.12.24)

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