行政主体を当事者の一方または双方とする契約のことを行政契約という。
※ 契約担当官等は、売買、貸借、請負その他の契約を締結する場合、原則として公告して申し込みをさせることにより競争に付さなければならないと、会計法で定められている。(会計法29条の3第1項)(行政手続法の中にはない。)
〈行政契約の分類〉
行政契約は合意で締結されるものなので、法律の根拠は不要。
~ 準備行政分野の契約 ~
行政活動に必要な物的手段を調達・整備するために行われる契約(文房具の購入)(法律の根拠は不要)
~ 給付行政分野の契約 ~
市町村などの行政主体が事業者となっており、そこから供給を受けるために行われる契約(水道水の供給契約)(法律の根拠は不要)
~ 侵害行政分野の契約 ~
一定の行政目的の達成のために国民の権利・自由を制限する行政活動分野における契約(公害防止協定)(法律の根拠は不要)
〈公害防止協定〉
国や地方公共団体が事業者との間で結ぶ契約。公害の防止をその内容とする。契約形式で地域に応じた公害防止の目標値を定めたり、具体的な公害対策の内容を定めたりしている。
企業との合意により有効に締結されれば、法的拘束力が認められる。(最判平21.7.10)
企業が地方公共団体との間で締結した公害防止協定による義務を履行しない場合、地方公共団体は、その義務の履行を求めて民事訴訟を提起することができる。
※ 行政上の義務の履行を確保する方法や刑罰については法律で定めなければならない。公害防止協定の中で行政上の強制執行を定めておくことはできず、契約違反に対する刑罰を定めたりすることもできない。
※ 公害防止協定には、契約としての法的拘束力が認められ、協定に基づく義務の履行を求める訴訟は法律上の争訟に該当する。
〈判例〉
※ 地方公共団体がごみ焼却場を建設するために建設会社と締結する建築請負契約は、抗告訴訟の対象となる処分には該当しない。(最判昭39.10.29)
※ 市が市の関連団体と契約を締結する場合、市を代表する市長が当該関連団体の代表でもある場合、当該契約締結行為については民法の双方代理の禁止の規定(民法108条1項)が類推適用される。(最判平16.7.13)
※ 指名競争入札について、村が発注する公共事業の指名競争入札の参加者の指名にあたり、工事現場等への距離が近く現場に関する知識等を有していることから契約の確実な履行が期待できることや、地元の経済の活性化にも寄与することばどを考慮し、地元企業を優先する指名を行うことについては、その合理性を肯定でき、裁量権の行使として許容できる。一方、地方公共団体の長が、指名競争入札の際に行う入札参加者の指名に当たり、法令の趣旨に反して地域内の業者だけを指名する運用方針の下、当該運用方針に該当しないことのみを理由に、これまで継続して入札に参加してきた業者を指名競争入札に参加させないことは違法。(裁判平18.10.26)
※ 地方公共団体が産業廃棄物処分業者と締結した公害防止協定において、施設の使用期限の定めおよびその期限を超えて産業廃棄物の処分を行ってはならない旨を定めることは、業者が受けた許可が効力を有する期間内にその事業または施設が廃止されるとしても、違法ではない。(最判平21.7.10)
※ 近い将来需要に応じきれなくなり深刻な水不足を生ずることが予測される等の事情がある場合、新たな給水申込みのうち、需要量が特に大きく住宅を供給する事業を営む者が住宅を分譲する目的であらかじめしたものについて給水契約の締結を拒むことは、急激な水道水の需要の増加を抑制するためのやむを得ない措置であって、水道法15条1項にいう正当な理由があるものといえる。(最判平11.1.21)
※ 水道事業者としては、たとえ指導要綱に従わない事業主からの給水契約の申込であっても、給水契約の締結を拒むことは許されず、また、給水契約の締結を拒む正当の理由も認められない。(最判平元11.8)(行政指導は任意の協力を求めるだけなので、給水契約の締結を拒否などを背景とすると指導に従わざるを得なくなってしまい、その任意性を損なうことになるから。)
※ 給水装置新設工事申込に対し、市が、当該建物が建築基準法に違反すること指摘して、その受理を事実上拒絶し申込書をその申込者に返戻した場合、それが申込の受理を最終的に拒否する旨の意思表示をしたものではなく、同法違反の状態を是正して建築確認を受けたうえ申し込みをするよう一応の勧告をしたものにすぎないときは、市のとった措置は違法な拒否には当たらず、申込者に対し工事申込の受理の拒否を理由とする損害賠償の責任を負わない。(最判昭56.7.16)