18.不利益処分

行施庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、またはその権利を制限する処分を不利益処分という。(2条4号)不利益処分については、12条から31条に定められている。


〈処分基準〉(12条)

不利益処分をするかどうか、またはどのような不利益処分にするかについて判断するための基準のことを処分基準という。

※ 処分基準を定めることも、定めた処分基準を公にすること努力義務
※ 行政庁は、処分基準を定めるにあたっては、不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。(12条2項)


〈理由の提示〉(14条)

行政庁は、不利益性分をする場合、処分の名あて人に対して、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならに。処分の理由の提示は、法定義務規定

※ 処分を書面でするときは、その理由を書面により示さなければならない。(14条3項)
※ 行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、不服申し立てに便宜を与える趣旨がある。(裁判平23.6.7)
※ 理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、同時に理由を示す必要はなく、処分後相当の期間内に理由を示せばよい。


〈不利益処分をするときの意見陳述の付与〉(13条)

不利益処分をしようとする場合、その処分の名あて人となるべき者に対し、意見陳述の機会を与えなければならない。

口頭審理を原則とする聴聞(不利益の程度が重いとき)と、書面審理を原則とする弁明の機会の付与(不利益の程度が重くないとき)という手続きがある。

※ 緊急に処分をする必要がある場合や、納付すべき金銭の額を確定して一定の額の金銭の納付を命じる場合など、意見陳述の機会の付与を省略できる場合もある。(13条2項)


〈聴聞〉(15条~28条)

 聴聞は、営業許可の取消しなどの不利益処分をしようとする場合に、その処分の名あて人となるべき者の意見陳述のための手続きとして実施される。
 行政庁からの通知により聴聞の場所が示され、処分の名あて人となるべき者は、その日に指定された場所に出頭して、自分の意見を陳述することができる。審理は、原則非公開で行われるで、行政庁が公開することを相当と認めるときを除き、公開されない。(20条6項)聴聞に審理を経て、行政庁が、処分するかどうかを決める。


〈聴聞の通知〉

行政庁は、聴聞を行うにあたっては、聴聞を行うべき期日までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、所定の事項を書面により通知しなくてはいけない。(15条1項)

~ 1項 ~

〈主体〉行施庁が通知(主催者ではない)
〈時期〉聴聞を行うべき期日までに相当な期間をおいて 通知
〈方式〉書面により通知(口頭はだ)
〈通知事項〉① 予定される不利益処分の内容・根拠法令の条項 ② 不利益処分の原因となる事実 ③ 聴聞の期日・場所 ④ 聴聞に関する事務を所掌する組織の名称および所在地

~ 2項 ~

〈教示事項〉 ① 聴聞の期日に出頭して意見を述べること、証拠書類等を提出できること、聴聞の期日への出頭に代えて陳述書・証拠書類等を提出できること ② 聴聞が終結する時までの間、当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができること

~ 3項 ~

〈名あて人所在不明のときの公示送達〉 名あて人の所在が判明しない場合、所定の事項を行政庁の掲示板に掲示し、2週間を経過したときは、通知がその者に到達したとみなされる。


〈当事者の権限〉
※ 当事者とは、聴聞通知を受けた人のこと。

~ 聴聞の期日に出頭 ~
 意見を述べ、証拠書類等を提出し、主宰者の許可を得て行政庁の職員に対し質問を発することができる。(20条2項)

~ 補佐人の同行 ~
 主宰者の許可を得て、保佐人とともに出頭することができる。(20条3項)

~ 陳述書等の提出 ~
 聴聞の期日への出頭に代えて主宰者に対し聴聞の期日まで陳述書・証拠書類等を提出することができる。(21条1項)

~ 文書閲覧請求 ~
 聴聞の通知があった時から聴聞が終結する時までの間、行政庁に対し、当該事案について調査した結果についての調書その他の当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。(18条1項前段)
※ 行政庁は、第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるときでなければ、その閲覧を拒むことはできない。(18条1項後段)


〈代理人〉

聴聞の通知を受けた者は、代理人を選任することができる。(16条1項)。代理人は、各自、当事者のために、聴聞に関する一切の行為をすることができる。(16条2項)


〈参加人〉

利害関係人は、主宰者の許可を得て聴聞に参加することができ、また、主宰者から聴聞に参加するように求められることもある。(17条1項)
※ 参加人も代理人を選任できる。(17条2項)
※ 主宰者の許可がいるのは、質問、補佐人、参加の3つと覚える。


〈主宰者〉

主宰者は、聴聞の審理を主催する者のこと。行政庁が指名する職員その他政令で定める者が主宰者となる。(19条1項)
※ 当事者、配偶者、4等親以内の親族は主宰者になれない。職員のうち当該処分に係る事案の処理に関与したから主宰者になれないという規定はない。


〈主宰者の権限〉

~ 冒頭説明 ~

行政庁の職員に、予定される処分の内容原因事実等を説明させる。(20条1項)

~ 欠席審理 ~

当事者または参加人の一部が出頭しないときでも、審理を行うことができる。(20条5項)

~ 続行期日の指定 ~

審理の結果、なお聴聞を続行する必要があると認められるときは、さらに新たな期日を定めることができる。(22条1項)

~ 聴聞の終結 ~

当事者出頭しない場合、聴聞を終結させることができる。(23条1項・2項)

~ 調書の作成 ~

聴聞審理が行われる場合、各期日ごとに、聴聞審理の経過を記載した調書を作成する。(24条1項)

~ 報告書の作成 ~

聴聞終結後速やかに、当事者等の主張に理由があるかどうかについての意見を記載した報告書を作成する。(24条3項)
※ 調書は、客観的なもの、報告書は主観的なもの。


〈聴聞終結後〉

聴聞が終結すれば、主宰者が作成した聴聞調書および報告書が行政庁に提出され、行政庁が不利益処分について決定する

行政庁は、不利益処分の決定をするにあたり、聴聞調書の内容および報告書に記載された主宰者の意見十分に参酌してこれをしなければならない。(26条)

行政庁は、聴聞の終結後に生じた事情にかんがみ必要があると認めるときは、主宰者に対し、提出された報告書を戻して聴聞の再開を命ずることができる。(25条)


〈弁明の機会の付与〉(29条~31条)

 弁明の機会の付与ば、不利益処分をするときに、その処分の名あて人となるべき者の意見陳述のための手段として実施される。弁明書の提出により自分の意見を陳述できる。
※ 略式の方法になるので、意見の陳述は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、弁明書で行うもの。(29条1項)(口頭での陳述を認めるのは例外)


〈通知〉

行政庁は、弁明書の提出期限までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、所定の事項書面により通知しなければならない。(30条1項)
※ 例外的に口頭による弁明の機会の付与を行う場合、その旨と出頭すべき日時場所が通知事項になる。

〈主体〉行政庁が通知
〈時期〉弁明書の提出期限までに相当な期間をおいて通知
〈方式〉書面により通知
〈通知事項〉① 予定される不利益処分の内容根拠法令の条例 ② 不利益処分の原因となる事実 ③ 弁明書の提出先・提出期限
〈教示規定〉聴聞とは異なり、教示規定はない。(聴聞の規定の準用はない


〈聴聞と弁明の機会の付与の相違〉

31条では、聴聞の規定のうち公示送達(15条3項)と代理人(16条)の規定だけを準用している。(参加人、補佐人、文書等の閲覧請求、通知の際の教示は、準用していないということ。)

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