22.行政不服審査法

行政庁の処分や不作為について、国民がその見直しを求め、行政庁に対して不服を申し立てる手続きについて定めた法律を行政不服審査法という。(昭和37年制定)

行政手続法の制定は、平成5年。行政事件訴訟法の改正が平成16年。
関係法制度の整備・拡充を踏まえて、平成28年6月に行政事件訴訟法が全面改正された。(平成28年4月から)この改定では、①公正性の向上、②使いやすさの向上、③国民の救済手段の充実・拡大が図られた。

※ 行政不服審査法は一般法。個別の法律に異なる規定があれば個別の法律の規定が適用され、個別の法律がないときは行政不服審査法が適用される。(1条2項)


〈行政不服審査法の条文体系〉
総則(1条~8条)
※ 目的、一般法、定義、適用除外

審査請求(9条~53条)
※ 審査請求の要件審理
※ 審査請求の本案審理
※ 審査請求の採決

再調査の請求(5条、54条~61条)
※ 審査請求との関係

その他
※ 執行停止(25条)、教示(82条)


〈目的〉
 行政不服審査法は、行政の違法または不当な処分その他公権力の行使にあたる行為を対象に、国民が簡易迅速かつ公正な手続きの下で行政庁に対する不服申立てをするための手続に関するルールを定めたもの。


〈一般概括主義〉… 原則すべてを対象として、例外的に対象外のものを列挙する考え方。

〈審査請求の規定が適用されない処分〉行政不服審査法7条1項

~ 一般行政庁の審査に適しないため除外 ~
1.国会の議決によってされる処分
2.裁判所の裁判によってされる処分
3.国会の議決を経てされるべきものとされている処分
4.検査官会議(会計検査院の意思決定機関)で決すべきものとされている処分

~ もっと慎重な手続きで判断すべきなので除外 ~
5.当事者間の法律関係を確認し、または形成する処分で、法令の規定により当該処分に関する訴えにおいてその法律関係の当事者の一方を被告とすべきものと定められているもの。(土地収用にあたり支払われる補償金の額の増額)
6.刑事事件の関する法令に基づいて司法警察職員がする処分。
7.税の犯則事件(脱税など租税の賦課徴収・納付に関する犯罪事件)に関する法令に基づいて税務署長がする処分。

~ 処分の性質上、一般法で対象とすべきでないため除外 ~
8.訓練所で訓練の目的を達成するために訓練生に対してされる処分
9.刑務所で収容の目的を達成するためにされる処分
10.外国人の出入国、帰化に関する処分(行政手続法では、難民の認定や補完的保護対象者の認定についても適用除外とされている。行政手続法3条1項10号)
11.専ら人の学識技能に関する試験の結果についての処分

~ 再び争わせる必要がないため除外 ~
12.行政不服審査法に基づく処分

~ 行政機関同士の処分や不作為は適用されない ~
 国の機関または地方公共団体その他の公共団体もしくはその機関に対する処分で、これらの機関または団体がその固有の資格において当該処分の相手方となるものおよびその不作については、行政不服審査法の規定は適用されない。(7条2項)
※ 「固有の資格」とは、国の機関等であるからこそ立ち得る特有の立場、すばわち、一般私人が立ち得ないような立場のことをいう。(最判令2.3.26)

~ 公務員に対する処分は、審査請求できる ~
 公務員に対する処分は、7条1項の審査請求の規定が適用されない処分には列挙されていない。公務員は、処分に不服があれば、審査請求することができる。(行政手続法では、公務員に対する処分は適用除外とされている。)

~ 地方公共団体の機関による処分は、審査請求できる ~
 地方公共団体の機関が条例・規制に基づいて行う処分は、7条1項の審査請求の規定が適用されない処分には列挙されていない。よって、地方公共団体が条例・規則に基づいてした処分に対して不服がある者は、審査請求することができる。(行政手続法では、地方公共団体が条例・規則に基づいてした処分は適用除外とされている。)


〈審査請求の流れ〉
 処分庁AがXに処分をして、処分が違法・不当だから取り消してほしいとき、審査請求審査庁Bにするとき。

1.審査請求の形式

2.審査請求の審理書面で審理することを原則とする。)

3.審査請求に対する裁決


〈審査請求の対象〉

審査請求となるのは、行政庁の処分不作為


〈審査請求人適格〉

※ 処分についての審査請求は、行政庁の処分に不服がある者がすることができる(2条)(審査請求をするにあたり法律上の利益がある者、自己の権利や法律上保護された利益を侵害された者、必然的に侵害されるおそれのある者)処分の場合、処分の直接の相手方以外でも審査請求できる。

※ 不作為についての審査請求は、法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をした者が審査請求できる。(3条)申請をした者以外は審査請求できない。

~ 審査請求のルール ~

※ 法人でない社団でも代表者の定めがあるものは、その名で審査請求をすることができる。(10条)〈法人でない社団〉
※ 多数人が共同して審査請求をしようとするときは、3人を超えない総代を互選することができる。(11条1項)【総代が互選されたときは、審査請求に関する行為は、総代を通じてのみ、行うことができる。(11条4項)、総代は、審査請求の取下げの権限を有しない。(11条3項)】〈総代〉
※ 審査請求は、代理人によってすることができる。(12条1項)【代理人は、審査請求の取下げ特別の委任を受けた場合に限りすることができる。(12条2項)】〈代理人〉
※ 利害関係人は、審理員の許可を得て、審査請求に参加することができる。(13条1項)また、審理員から、審査請求に参加することを求めることもできる。(13条2項)参加人も、審査請求人と同様、申立てにより口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えられ、証拠書類や証拠物を提出することができる。(31条1項、32条2項)
※ 審査請求の審理において口頭意見陳述が認められる場合審理員の許可を得て、保佐人を同行させることもできる。(31条3項)

〈審査請求の宛先〉(4条)
 審査請求の宛先となり、裁決をする権限を有する行政庁のことを審査庁という。

行政庁AがXに対して処分をした場合。
① 処分庁Aに上級行政庁がない場合の審査請求の宛先は、処分庁A
② 処分庁Aに上級行政庁Bがある場合の審査請求の宛先は、上級行政庁B
③ 法律で審査請求の行政庁がCと定められている場合の審査請求の宛先は、当該法律の定める行政庁C

※ 審査請求すべき行政庁が処分庁等と異なる場合、審査請求は処分庁等を経由してすることができる。(21条1項)
※ 処分庁が主任の大臣の場合は特別のルールが置かれていて、上級行政庁は内閣だけれでお、処分庁である大臣自身が審査請求先となる。また、上級行政庁が複数ある場合は、最上級行政庁が審査請求先になる。この場合、処分庁等は、直ちに、審査請求書等を審査庁となるべき行政庁に送付しなければならない。(21条2項)


〈審査請求期間〉

処分には不可争力(一定期間を過ぎたら私人からは争えなくなる効力)があるので、法定審査請求期間を過ぎると審査請求することができなくなる。(18条)(正当な理由があるときは除く)

審査請求期間は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内(18条1項)。また、処分があったことを知らなかったとしても、処分があった日の翌日から起算して1年を過ぎると審査請求できなくなる。(18条2項)(正当な理由があるときは除く)

不作為の場合、期間制限はない


〈審査請求の方式〉

審査請求は、原則として、書面(審査請求)を提出して行う。(19条1項)(個別法で口頭ですることができる旨の定めがあるときはできる。)

行政庁の処分に対して審査請求する場合、審査請求書には、審査請求人の氏名住所、審査請求に係る処分の内容審査請求の年月日、審査請求の趣旨、審査請求の理由などを記載する。(19条2項)

審査請求書に不備がある場合、審査庁は、相当の機関を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じる。(23条)


〈標準審理期間〉

審査請求がその事務所に到達してから当該審査請求に対する裁決をするまで通常要すべき標準的な期間標準審理期間という。

標準審理期間を定めることは努力。定めた標準審理期間を公にすること義務。(行政手続法6条の標準処理期間と同じように、設定は努力、公にするは義務と覚える。)

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