26.訴訟類型

行政事件訴訟法は、行政の処分に不服があるときにその取消しを求めて裁判をするときのルール。行政救済の仕組みの1つ。(昭和37年に制定)

平成16年改訂では、義務付け訴訟差止め訴訟の2つを抗告訴訟の類型として追加。また、裁判管轄の拡大出訴期間の伸長教示規定の創設が行われた。

※ 行政事件訴訟法は一般法なので個別の法律に異なる規定があれば個別の法律が適用され、個別の法律がないときは行政事件訴訟法の規定が適用される。(1条)


〈行政事件訴訟法の条文体系〉

総則(1条~7条)
※ 一般法、定義、民事訴訟法との関係

取消訴訟(8条~35条)
※ 要件審理
※ 本案審理
※ 判決

取消訴訟以外の訴訟(36条~43条)
抗告訴訟
※ 無効等確認訴訟
※ 不作為の違法確認訴訟
※ 義務付け訴訟
※ 差止め訴訟

※ 当事者訴訟

客観訴訟
※ 民間訴訟
※ 機関訴訟

その他
※ 訴訟類型の具体的な分類
※ 執行停止、教示について行政不服審査法との比較


〈他の法律との関係〉
民事訴訟法は、訴訟に関する一般的なルールが定められたもの。
行政事件訴訟法は、行政事件の特殊性を考慮し、行政事件訴訟に関する一般的なルールを定めたもの。
※ 行政事件訴訟法に定めがない事項については、民事訴訟の例によるものとされている。(7条)
※ 民事訴訟法54条1項本文では、原則として弁護士でなければ訴訟代理人となることができないことが規定されている。


〈主観訴訟〉個人の権利利益の保護を目的とする訴訟。

~ 抗告訴訟 ~

※ 処分取消訴訟… 行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為の取消しを求める訴訟(3条2項)(営業停止処分の取消しを求める訴訟)

※ 採決取消訴訟… 審査請求その他の不服申立てに対する行政庁の採決、決定その他の行為の取消しを求める訴訟(3条3項)(営業停止処分を審査請求で争い棄却判決が出された場合に採決の取消しを求める訴訟)

※ 無効等確認訴訟… 処分もしくは採決の存否またはその効力の有無の確認を求める訴訟(3条4項)(重大かつ明白な瑕疵のある課税処分の無効の確認を求める訴訟。)

※ 不作為の無効確認訴訟… 行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分または採決をすべきであるにもかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟。(3条5項)(営業許可申請をしたのに何の対応もされていないことが違法であることの確認を求める訴訟)

※ 義務付け訴訟… ① 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき、② 行政庁に対し一定の処分または採決を求める旨の法令に基づく申請または審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分または採決をすべき旨を命ずることを求める訴訟(3条6項)(営業許可処分がされないように義務付けを求める訴訟)

※ 差止め訴訟… 行政庁が一定の処分または採決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分または採決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟。(3条7項)(営業停止処分がされないように処分の差止めを求める訴訟)

~ 当事者訴訟 ~(当事者訴訟は、処分に対する抗告という性質をもつものではなく、国民と行政が対等な当事者間の権利利益および法律関係をめぐる訴訟)

※ 形式的当事者訴訟… 当事者間の法律関係を確認しまたは形成する処分または採決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの(4条前段)(土地収用法に基づく損失補償額が少ないので、その増額を求める訴訟)

※ 実質的当事者訴訟... 公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟(4条後段)(選挙権の確認を求める訴訟、国籍の確認を求める訴訟)

〈客観訴訟〉個人の権利利益とは関係なく、法の正しい運用を目的とする訴訟。

~ 民衆訴訟 ~

※ 国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するもの(5条)(選挙無効訴訟【公職選挙法】、住民訴訟【地方自治法】)

~ 機関訴訟 ~

※ 国または公共団体の機関相互間における権限の存否またはその行使に関する紛争についての訴訟(6条)(地方公共団体の議会の議決が違法かどうかにつき長と議会が対立し、出訴する場合の訴訟【地方自治法】、市町村の境界に係る都道府県知事の裁定に対して関係市町村が提起する訴訟【地方自治法】)

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