〈義務付け訴訟〉
行政庁が一定の処分をすべきであるにもかかわらずこれがされないとき、行政庁に当該処分をするよう義務付けさせるために用意された訴訟を義務付け訴訟と言う。
※ 義務付け訴訟には、非申請型義務付け訴訟と申請型義務付け訴訟(不作為型と拒否処分型)がある。
〈非申請型義務付け訴訟〉(申請行為は前提とならない。)
Xが違法建築を行っているにもかかわらず、行政庁AがXに対して出すべき処分を出さないでいる場合。当該建物の周辺住民であるYが義務付け訴訟を提起。
※ 非申請型義務付け訴訟は、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がない時に限り、提起することができる。(37条の2第1項)
※ 非申請型義務付け訴訟は、行政庁が一定の処分をすべき旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。(37条の2第3項)
※ 非申請型義務付け訴訟には出訴期間の規定はない。
〈申請型義務付け訴訟〉
許可申請をしたことに対し行政庁の不作為がある場合、申請者が不作為の違法確認訴訟を提起して認容判決を得ても、不作為の違法が確認されるだけで、行政庁が実際に許可処分をしてくれるかどうかは不透明なため、許可処分を出すことを義務付けさせるために用意されたのが、申請型義務付け訴訟。
Xが行政庁Aに対して許認可申請をした場合、不作為や拒否処分があり、Xが義務付け訴訟を提起するとき。
〈法令に基づく申請に対し何も返答がない場合〉
※ 不作為の違法確認訴訟と義務付け訴訟を併合提起(不作為型:37条の3第3項1号)
〈法令に基づく申請を拒否する処分がされた場合〉
※ 処分取消訴訟と義務付け訴訟を併合提起(拒否処分型:37条の3第3項2号)
※ 義務付け訴訟だけを提起することはできず、不作為の違法確認訴訟や取消訴訟などと併合して提起する必要がある。(37条の3第3項)
※ 拒否処分に対する取消訴訟と義務付け訴訟を併合提起する場合、取消訴訟の出訴期間に服する。
※ 義務付け判決までは不要と言うことであれば、不作為の違法確認訴訟や取消訴訟だけの提起はできる。
〈仮の義務付け〉
義務付け訴訟には、判決が出るまでには時間がかかることを考慮し、仮の権利保護の仕組みとして、仮の義務付けの制度がある。
※ 仮の義務付けは、非申請型と申請型のいずれについても認められる制度。
※ 仮の義務付けには、執行停止における内閣総理大臣の異議の制度も準用される。(37条の5第4項)
行政庁AがXに対して出すべき処分を出さないでいることに対し、Xが不作為の違法確認訴訟と合わせて義務付け訴訟を提起した場合の仮の義務付け制度。
〈仮の義務付けの要件〉(37条の5第1項・3項)
① Xが義務付け訴訟を提起した上で、仮の義務付けの申立てをすること。
② 処分がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があること。
③ 本件について理由があるとみえること。
④ 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないこと。ある時はできない。)
※ 申請型と非申請型の義務付け訴訟いずれにおいても、「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要がある」ことなどの要件を満たせば、裁判所は、申立てにより、仮の義務付けを命ずることができる。
〈準用条文〉
取消訴訟と同じルールが適用されるところは、取消訴訟の条文を準用する形式がとられている。(38条)
~ 取消訴訟と同じルールが義務付け訴訟にも準用されているもの ~
※ 被告適格の規定
※ 裁判管轄の規定
※ 判決の拘束力の規定
~ 取消訴訟と同じルールが義務付け訴訟にも準用されていないもの ~
※ 執行停止の申立ての規定
※ 出訴期間の規定
※ 判決の第三者効の規定