40.住民監査

〈住民監査請求〉
住民は、普通公共団体の執行機関や職員が違法または不当な財務会計所の行為をしていることを発見した場合、これらを証する書面を添えて、監査委員に対して、その監査を請求できる。(242条1項)

A市の住民XがA市の職員B違法な公金支出をしていることを発見した場合。
※ A市の監査委員に対して、違法な財務会計上の行為であることを証する書面を添えて、住民監査請求できる。
※ XがA市の住民であれば、選挙権の有無を問わず単独でも住民監査請求できる。
※ 違法または不当財務会計上の行為および怠る事実が住民監査請求の対象。
※ 監査委員の監査および勧告は、請求があった日から60日以内に行わなければならない。(242条6項)
※ 監査委員は、当該普通地方公共団体のその他の執行機関または職員に対し、監査の手続きが終了するまでの間当該行為を停止すべきことを勧告することができる。(暫定的停止勧告、242条4項)

~ 住民監査請求 ~
※ 請求主体(住民
※ 単独での請求(できる
※ 外国人・法人による請求(できる
※ 請求対象(違法または不当な財務会計上の行為および怠る事実)、
※ 請求先(監査委員会
※ 期間制限あり
 ☆財務会計上の行為⇒ 当該行為があった日から1年を経過したときは住民監査請求をすることができない(正当な理由があるときは延長できる)
 ☆怠る事実⇒ 期間制限はない
※ 住民訴訟できる

~ 事務監査請求 ~
※ 請求主体(有権者の50分の1以上連署
※ 単独での請求(できない)
※ 外国人・法人による請求(できない)
※ 請求対象(事務全般:自治事務でも法定受託事務でもできる)
※ 請求先(監査委員会
※ 期間制限(なし)
※ 住民訴訟できない


〈住民訴訟〉
住民監査請求をした住民は、監査結果に不服があれば、裁判所に対し、住民訴訟を提起することができる。(242条の2第1項)ただし、司法審査である性質上、違法なものに限られ不当にとどまるものについては扱われない
※ 住民訴訟の提起には住民であることが必要。前年度の納税実績がなくてもよいが、現在住民でなければ原告適格は認められない。
※ 住民訴訟は、行政事件訴訟法上は「民衆訴訟」に分類される。
※ 住民訴訟を提起した者が勝訴した場合、弁護士に支払う報酬額の範囲内で相当と認められる額の支給は、当該普通地方公共団体に対して請求できる。(242条の2第12項)

A市の住民Xが住民監査請求をした後、住民訴訟を提起する場合。
※ 原告適格(住民監査請求をしたA市の住民X
※ 出訴期間(30日以内)
※ 裁判管轄(地方裁判所

住民訴訟でできること(4類型)
① 差止めの請求
② 取消しまたは無効確認の請求
③ 怠る事実の違法確認の請求
④ 職員に対して損害賠償請求または不当利得返還請求をすることをA市長に求める請求
※ 住民監査請求を提起する前に住民監査請求をしていなければならない。(住民監査請求前置主義:242条の2第1項)
※ すでに住民訴訟が係属しているときは、他の住民別訴をもって同一の請求をすることができない。(242条の2第4項)

〈判例〉
※ 県議会議員として職務とは評価できない野球大会に参加した議員は、県から支給された旅費等は不当利得として県に返還する義務を負う。(最判平15.1.17)
 ☆ 職務命令に従い野球大会に参加した県議会議員に随行した県職員は、県から支給を受けた旅費相当額の不当利得返還義務は負わない。
※ 普通公共団体が随意契約の制限に関する法令に違反して締結した契約は、当該契約を無効としなければ随意契約の締結に制限を加える法令の趣旨を無視する結果となる特段の事情が認められる場合に限り、私法上無効となり、その場合は差止めの請求対象となる。(最判昭62.5.19)
 ☆ 随意契約とは、入札などの方法によらず、任意に契約相手を選んでする契約のこと。
※ 適法な住民監査請求を監査委員会が不適法却下しても、その請求を行った住民は、適法な住民監査請求を前置したものとして住民訴訟を提起することも、再度住民監査請求をすることもできる。(最判平10.12.18)
※ 懲戒免職事由に該当する職員に対し、退職手当が支給されない懲戒免職処分でなく、退職手当が支給される分限免職処分にして退職手当を支給した場合、分限免職処分にしたことが違法であれば、それに伴う退職手当の支給も違法となる。(最判昭60.9.12)
※ 教育委員会が、公立学校の教頭で勧奨退職に応じた者を校長に任命して昇給させるとともに同日退職を承認する処分をし、退職手当の支給決定をすることは、財務会計法規上の義務に違反する違法なものとはいえない。(最判平4.12.15)
※ 住民訴訟の対象とされている損害賠償請求権または不当利得返還請求権について債権放棄することの適否の実体的判断については、議会の裁量に委ねられており、それが裁量権の範囲の逸脱または濫用に当たらなければ適法であり、債権放棄は有効といえる。(最判平24.4.20)
※ 住民訴訟は、原告が死亡した場合においては、その訴訟は承継されることなく当然に終了する。(最判昭55.2.22)
※ 知事が、県の事業の一環として共催された管弦楽団の演奏会に出席することは公務に該当し、知事が公務として本件演奏会に出席し、そのため公用車を使用したことは、違法ではない。(最判令3.5.14)

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