〈拒否権〉
長は、議会の議決について異議があるときに、これを再議に付すことができる。(176条1項)
※ 再議に付す場合、理由を示して行うことが必要。
拒否権… 長には、議会の議決に反対する権限が認められていてこれを拒否権という。
市議会で条例を制定する議決がされて、市長がこれに異議を申し立て、拒否権を発動して再議に付す場合。
※ 長が拒否権を発動し、再議に付した場合、議会の議決は効力を失うが、議会で再度審議して再可決することは可能。再可決した時は、その議決で確定し、条例が制定される。
※ 議会の議決は、通常出席議員の過半数で決せられるが、条例や予算の場合の再可決には出席議員の3分の2以上の同意が必要。(176条3項)
〈一般拒否権〉
行使できる場合⇒ 条例の制定・改廃、予算に関する議会の議決
長の対応⇒ 再議に付すのは任意
再度同じ議決になった場合の処理⇒ 議会の議決が確定する。(条例・予算の場合、再議決には出席議員の3分の2以上の同意が必要。
※ その他の議決は、再度同じ議決になった場合は、議会の議決が確定する。
〈特別拒否権〉
① 議会の議決または選挙が、その権限を越え、または法令・会規則に違反
長の対応⇒ 再議に付しまたは再選挙を行わせるのは義務
再度同じ議決になった場合の処理⇒ 21日以内に都道府県知事は総務大臣へ、市町村長はと都道府県知事へ審査の申し立てをして、その裁定に不服があれば60日以内に裁判所へ出訴できる。
② 義務費の削除・減額の議決
長の対応⇒ 再議に付すのは義務
再度同じ議決になった場合の処理⇒ 義務費を予算に計上して支出できる。(原案通りに執行)
※ 義務費… 法令により負担する経費、法律の規定に基づき当該行政庁の職権により命ずる経費など地方公共団体の義務に属する経費のこと。
③ 非常費の削除・減額の議決
長の対応⇒ 再議に付すのは義務
再度同じ議決になった場合の処理⇒ その議決を自らへの不信任議決とみなすことができる。
※ 非常費… 非常の災害による応急・復旧の施設のために必要な経費や感染症予防のために必要な経費のこと。
〈不信任と解散〉
議会は、長を不信任することができ、これに対し、長は、議会を解散させることができる。(178条1項)
市長が選挙で公約として掲げていた政策についてまったく実現できておらず、それを部下のせいにするなどして市の発展を妨げていることを理由に、市長としてふさわしくない人物だとして市議会が市長を不信任にする場合。
※ 議会で、議員が3分の2以上出席し、その4分の3以上の議決があったとき、長は、議会を解散するかどうか決めなければならず、もし解散させなければ、長は失職する。
※ 議会が長の不信任の議決をしたときは、直ちに議長からその旨が長に通知され。長はその通知を受けた日から10日以内に議会を解散させることができる。(178条1項)
※ 長が解散権を行使した場合は、解散後初めて招集された議会において再び不信任の議決が成立したときは、長は失職する。(178条2項)
※ 地方自治法には議会が自ら解散することを認める条文はないが、「地方公共団体の解散に関する特例法」には、議会が解散の議決をすることができる旨が定められている。
※ 1度目の不信任の可決要件は4分の3以上の賛成だが、2度目の不信任の可決要件は過半数になっている。
〈長の先決処分〉
長は、議会の権限に属する事項を議会に代わって行うことができる。(179条1項)これを長の専決処分という。
※ 副知事・副市長村長の選任や総合区長の選任における議会の同意は、専決処分の対象外。(179条1項ただし書き)
① 地方自治法の規定に基づき長が判断する場合。(179条)
専決処分できるとき⇒
1.地方公共団体の議会が成立しないとき。(事前に議会が関与していない。)
2.議会の定足数の例外を認めてもなお会議を開くことができないとき。(議会から頼まれたことを行っただけということになり、事後に報告だけでよく、承認までとる必要はない。)
3.長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき
4.議会において議決すべき事件を議決しないとき
専決処分した後⇒ 議会に報告し、その承認を求めなければならない。
② 議会の委任に基づく場合(180条)
専決処分できるとき⇒
※ 議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したとき
専決処分した後⇒ 議会に報告しなければならない。
〈地方公共団体の財務〉
会計年度… 普通地方公共団体の会計年度は、毎年4月1日から翌年3月31日まで。(208条1項)
予算… 長が調製し、議会の議決を経て定められる。(211条1項)
決算… 会計管理者が調製し、証書類等とあわせて、長に提出し、長が監査委員の審査に付し、その後議会の認定に付さなければならない。(233条1項~3項)
地方税… 普通公共団体は、地方税法の定めるところにより、地方税を賦課徴収することができる。(233条)
分担金、使用料、加入料、手数料に関する事項については、条例でこれを定めなければならない。(228条1項)
※ 分担金とは、事業の経費にあてるため、その事業により特に利益を受けるものから徴収する金銭のこと。
※ 使用料とは、公共施設の利用に対して、その対価として徴収する金銭のこと。
※ 加入料とは、公共施設の使用者に一定の設備を利用させるときに施設の使用料とは別に徴収する金銭のこと。
※ 手数料とは、手続きを行うことに対して徴収する金銭のこと。
地方債… 普通公共団体は、地方財政法で定める場合において、予算の定めるところにより、地方債を起こすことができる。(230条の1項)
※ 地方債とは、地方公共団体が次年度以降の収入で返済する条件で負担するさいむのこと。
※ 地方債の発行につき、以前は許可制がとられていたが、現在は協議制に移行している。
契約の締結… 売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約、せり売りの方法により締結される。(234条1項)
一般競争入札によることが原則とされ、指名競争入札、随意契約、せり売りは、政令で定める場合に限り、これによることができる。(234条2項)