9. 行政指導の分類

 行政機関から、特定の相手方に対して、任意の協力を求めて働きかけることを行政指導という。
※ 行政指導は、法律の条文上は「勧告」や「助言」と呼ばれる。

(行政庁Aが、事業者Xに対して寄付金を支払うことを助言した場合が、行政指導にあたり、寄付金を払うかどうかはXの任意の判断に拠る。指導に従わない者に対して不利益な取扱いをして事実上強制することはできない。)


〈行政指導の分類〉

~ 規制的行政指導 ~

 相手方の活動を規制することを目的として行われる行政指導。(違法建築物の改修勧告)(法律の根拠は不要

~ 助成的行政指導 ~

 相手方に対して情報を提供し、私人の活動を助成しようとする行政指導。(経営指導)(法律の根拠は不要

~ 調性的行政指導 ~

 私人間の紛争に行政が介入し、その解決方法を探るために行われる行政指導(建築主と近隣住民の紛争解決を図るための指導)(法律の根拠は不要

※ 法律の根拠が不要とは、法律の根拠があってはいけないということではなく、法律の根拠はあってもなくてもよいという意味。誇示情報保護法に基づいて個人情報保護委員会が行う行政指導のように法律に根拠が置かれているものもある。


〈判例〉

※ 一般に行政指導は抗告訴訟の対象となる処分とはいえないが、医療法に基づく病院開設中止勧告は、抗告訴訟の対象となる処分に該当する。(最判平17.7.15)
※ 建築確認申請をしたマンションの建設事業者が行政指導に不協力・不服従の意思を表明している場合、当該建築主が受ける不利益と行政指導の目的とする公益上の必要性とを比較衡量して、行政指導に対する建築主の不協力が社会通念上正義の観念に反するものといえるような特段の事情が存在しない限り、行指導が行われているとの理由だけで確認処分を留保することは、違法な行為といえる。(品川マンション事件最判昭60.7.16)
※ 市が教育施設負担金の納付を行政指導として行う場合でも、マンションの建設事業者に対し、指導要綱所定の負担金を納付しなければ水道の給水契約の締結および下水道の使用を拒絶することを背景とすれば、行政指導に従うことを余儀なくさせることになり、事業主に教育施設負担金の納付を事実上強制しようとしたものといえ、国家賠償法上、違法な行為といえる。(武蔵野マンション事件:最判平5.2.18)

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