代理…自分の代わりに他人に法律行為をしてもらうこと。そのルールが民法で定められている。
代理人…BがAの代理人としてCと契約。
※ 契約の効果はAC間に帰属する。
※ 任意代理としての地位の付与は委任契約によることが多い。雇用契約や請負契約によることもある。
※ 代理人は、本人のためにすることを示す必要がある。(顕名)
※ 代理人が、本人のためにすることを示さないでした意思表示は、本人に効果は帰属しないが、相手方CがBがAのためにしていることを知りまたは知ることができたときは、AC間に効果が帰属する。
法定代理…法律で定められた代理。(未成年者の親)
任意代理…本人が自らの意思で代理権を与える代理。
※ 任意代理人の代理権の範囲は、代理権授与契約の内容によって定められる。
代理行為の意思決定…代理人が相手方に対して、また、相手方が代理人に対してした意思表示の効果が、意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫、善意、悪意、過失の有無によって影響を受けるときは、その事実の有無は、代理人について判断する。
代理人の能力… AがBに頼んで、BC間で契約。
※ 代理人Bが制限行為能力者だったとしても、それを理由に契約の取消しはできない。
代理権の範囲…法定代理の場合は、法律で、任意代理の場合は代理権授与契約の内容で決められる。範囲がはっきり分からないときのために、民法でその範囲が定められている。
※ AがBに頼んで、家のことを任せていたが、代理の範囲を決めてなかった場合。⇒ 家の保存行為(〇)、利用・改良行為(〇)、処分行為(×)
代理権の濫用
※ 代理人Bが自分の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合、相手方Cがその目的を知りまたは知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなされ、本人Aに効果帰属しません。
※ ただし、相手方が、善意無過失の場合は、AC間に効果が帰属する。Cが悪意または有過失の場合、AC間に効果は帰属しない。
自己契約… 「Aの代理人B」が買主という形でした契約。自己契約は無権代理とみなされるが、①債務の履行および ②本人があらかじめ許諾した行為についてはこの限りではない。
利益相反行為… 代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなされ、本人に効果帰属しません。
※ 母親自身が債務者となりお金を借りて、その担保のために未成年者の子ども名義の土地に抵当権を設定することは、利益相反行為にあたる。
復代理…代理人がさらに代理人を選任し、その者に本人を代理させること。
※ 任意代理人は、①本人の許諾を得たときまたは、②やむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。
※ 法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。
※ 復代理人は、本人および第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。
〈代理人と使者の相違〉
意思能力⇒ 代理人(必要)/ 使者(不要)
行為能力⇒ 代理人(不要)/ 使者(不要)
意思表示⇒ 代理人(代理人について判断)/ 使者(本人について判断)
別のものを選任⇒ 法定代理(できる)、任意代理(原則できない)
使者(できる)
権限逸脱⇒ 代理人(本人に効果は帰属しないが、本人の追認や表見代理の成立により有効になることもある。 / 使者(本人の意思と異なる意思を伝達した場合、意思と表示の不一致の問題として錯誤で処理される。
無権代理⇒ 代理権を持たない者が、本人から頼まれたわけでもないのに代理行為を行うことを無権代理という。
※ 無権代理人がした契約は、本人が追認した時は、本人に効果帰属し、本人が追認拒絶したときは、本人に効果帰属しない。
※ 無権代理人と契約した相手方は、催告権、取消権、無権代理人の責任追及が認められている。
※ 無権代理人の相手方は、本人に対して追認するかどうかを確答するべき旨の催告をすることができる。本人が返答しないときは、追認拒絶とみなす。
※ 無権代理人の相手方は、本人が追認するまでであれば、この契約を取り消すことができる。
※ 無権代理人の相手方は、無権代理人に対して、契約の履行または損害賠償の請求をすることができる。(要件)①無権代理人が代理権を証明できない。②本人が追認していない。③無権代理人が制限行為能力者ではない。④相手方が善意無過失(相手方が過失によって知らなかった場合でも、代理人が自己に代理権がないこを知っていたときは責任追及できる。)
「みなす」⇒ 法律上一定の取扱いをし、反対の証明があってもその取扱いは変わらない。
「推定する」⇒ 法律上一定の取扱いをし、反対の証明があればその取扱いを改める。
〈無権代理と相続〉
※ 無権代理人が本人を単独相続(本人Aが死亡し、無権代理人Bが本人を単独相続した場合。)⇒ 無権代理行為は、有効となる。(追認拒絶はできない。)
※ 本人の追認任拒絶後に無権代理人が本人を単独相続⇒ 無権代理人は、本人の追認拒絶の効果を主張できる。
※ 無権代理人が本人を共同相続(本人Aが死亡し、無権代理人Bが本人をDEとともに共同相続した場合。)⇒ 追認は共同相続人全員で行う必要があるため、他の共同相続人の1人でも追認拒絶をすれば無権代理行為は有効にならない。(DEのどちらかが追認拒絶すれば、Cは土地を渡さなくてよい。無権代理人の3分の1だけ追認することはできない。)
※ 本人が無権代理人を単独相続(無権代理人Bが死亡し、本人AがBを単独相続した場合。)⇒ 本人Aは、無権代理人を相続したとしても、追認拒絶することはできる。
※ 無権代理人を相続した者がその後に本人を相続(無権代理人Bを本人Aとともに相続したDが、その後に本人Aを相続した場合)⇒ 無権代理人を相続したDは、その後に本人を相続したとしても、無権代理行為を追認拒絶することはできない。
〈表見代理〉
無権代理行為であっても表面上は正当な代理権があるように見える場合、一定の要件の下で、有効な代理行為があったものとして本人にその効果を帰属させること。
① 代理権授与表示…AはBに代理権を授与してないのにCに対してBに代理権を与えた旨を表示した場合、その代理権の範囲内においてBがC(善意無過失)との間でした行為について、AはBのしたことについての責任を負う。(工事材料購入の代理権を与えたわけではないが、A名義で工事をすることを許容している場合、代理権授与の表示ありとみなされ、表見代理が成立し、Aに対して代金の支払いを請求できる。単に、下請負契約があるだけでは、表見代理は成立しない。)
② 代理権逸脱の表見代理…AがBに授与した代理権の範囲外のことをBがAの代理人としてCとの間でした行為について、CがBにその権限があると信ずべき正当な理由があるとき(Cが善意無過失)は、AはBのしたことについての責任を負います。この場合、本人が付与していた基本権限は、私法上の法律行為(建物の賃貸の代理権など)に関するものであることが必要。勧誘行為をさせるだけであれば、法律行為ではないので、基本権限の付与とは評価されない。公法上の法律行為単体の代理権は、私法上の行為ではないので、基本権限の付与とは評価されない。
③ 代理権消滅後の表見代理…AはBに代理権を授与していたが、代理権消滅後にBがAの代理人としてその代理権の範囲内のことについてC(善意無過失)との間でした行為について、AはBのしたことについて責任を負う。
※ 無権代理人と取引した善意無過失の相手方は、無権代理人の責任追及もできる。無権代理人Bが、Aの代理人としてCと売買契約をした場合、表見代理を主張してAに支払ってもらうか、無権代理人の責任を追及してBに支払ってもらうかは、Cが選択すること。Cが無権代理人の責任の追及を選択したことに対し、Bが表見代理の成立を抗弁として自分に責任がないと主張することはできない。