7.占有権

占有権… 所有権とは、別のもので、物を所持している状態そのものを権利として保護するもの。

占有権の成立… 占有権は、自分のためにする意思物の所持があれば取得できる。(180条)

代理占有… 占有権は、直接自分で所持している物に限らず、他人に所持させている物に対しても認められる。(代理占有、181条)
※ Bが所持している時計をAに貸している場合、所有権はBのところに一つしかないが、占有権は、直接の占有者Aのほか、貸主(所有者)Bにも占有権が認めらる。Aの占有権を自己占有(直接占有)、Bの占有権を代理占有(間接占有)と言う。

占有権の相続… 占有権も権利なので相続の対象になる。例えば、土地賃借人が死亡した場合、賃借人の占有権はその相続人に承継される。

※ 善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。(189条)善意の占有者でも本件の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなされる。(189条2項)


〈占有の譲渡〉
178条では、動産に関する物権の譲渡は、その動産の引き渡しがなければ第三者に対抗することができないことが規定されている。引き渡しには、①現実の引き渡し ②簡易の引き渡し ③占有改定 ④指図による占有権移転も含まれる。

簡易の引き渡し… 東京にいるAが所有する時計を、大阪にいるBに賃貸している。BがAから時計を買い取った場合、時計は大阪から現実に移動せずに意思表示だけで占有を譲渡できる。(東京にいるA:所有権・占有権、大阪にいるB:占有権⇒ 東京にいるA:なくなる、大阪にいるB:所有権・占有権)

占有改定… 東京にいるAが自分が所持する時計を大阪にいるBに売却したが、引き続きBから預かっておくことにした。この場合、時計は東京から現実に移動せずに以後BのためにAが代わりに占有する意思を表示することで、Bは占有権を取得できる。(東京にいるA:所有権・占有権、大阪にいるB:なし⇒ 東京にいるA:占有権、大阪にいるB:所有権・占有権

指図による占有移転… 東京にいるAは、名古屋にいるCに預けていたA所有の時計を大阪にいるBに売却したが、Bの承諾を受けて引き続きCに今後はBのために預かってもらうことにした場合、時計は名古屋から現実に移動せずに、AからCへの指図Bの承諾があることでBは占有権を取得できる。(東京にいるA:所有権・占有権、名古屋にいるC:占有権⇒ 東京にいるA:なくなる、名古屋にいるC:占有権、大阪にいるB:所有権・占有権


〈占有の性質〉
所有の意思のある占有⇒ 自主占有
所有の意思のない占有⇒ 他主占有(例えば、借家にすんでいる人)
※ 最初は他主占有でも、①占有者が自己に占有させた者に対して所有の意思を表示した場合(賃貸人が借りている物を自分の所有物だと表示する場合。)  ②新たな権原によりさらに所有の意思をもって占有を始めた場合。(賃貸人から買い取った場合。) 占有の性質が自主占有に切り替わる。


〈占有訴権〉
占有の侵害があったときに、その侵害の様態によって占有権を根拠とする訴えの提起が認められている。

占有物を奪われた場合⇒ 占有回収の訴えによって、その返還および損害の賠償を請求できる。(詐欺や遺失は対象にならない。)

占有物が妨害された場合⇒ 占有保持の訴えによって、妨害の停止および損害の賠償を請求できる。

占有物が妨害されそうになった場合⇒ 占有保全の訴えによって、妨害の予防または損害賠償の担保を請求できる。

※ 占有を奪われた時から1年経過した場合は、占有回収の訴えができなくなる。
※ 善意の特定承継人が登場した場合のは、占有回収の訴えができなくなる。(奪ったBが善意のCに売却したとき。また、Cから悪意のDに売却されても、一度善意の承継人が登場したら、占有回収の訴えはできなくなる。)

※ 占有者が所有者でもあった場合は、権利を侵害されたときは、占有訴権のほか、所有権に基づく物権的請求権の行使も可能。


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