所有権の取得には、前主の所有権を引き継ぐ形で取得する承継取得(売買契約・相続)と、前主の権利とは関係なく所有権取得を認める原始取得(時効による取得・即時取得)がある。
〈符号〉… 異なる所有者に属する2個以上の物が結合して1個の物になること。2つの動産が損傷なしには分離することができなくなった時や、分離するするのに過分の費用を要するときは、符号の問題として、その合成物の所有権を主たる動産の所有者に帰属させる。
※ A所有の不動産(家) + B所有の動産(板) ⇒ A所有となる
※ A所有の主たる動産(椅子)+B所有の従たる動産(釘)⇒A所有となる
※ A所有の動産(机)+ B所有の動産(机)⇒ AB共有となる(持分は付合当時の価格割合による)
〈加工〉… 他人の物に工作を加えて新しい物をつくること。
※ A所有の材料(木材)+Bが加工(彫刻)⇒ A所有となる(人形)
※ A所有の材料(木材)+Bが加工(有名な芸術家Bが彫刻)⇒B所有となる(人形)〈有名な芸術家が加工したことで完成物の価格が材料の価格を著しく超えるようになったから〉
〈無主物先占〉… 所有者のない動産は、所有の意思をもって占有した者が所有者となること。(海で釣った魚など)
※ 不動産の場合、無主物先占は認められておらず、所有者のない不動産は国庫に帰属する。
〈遺失物取得〉… 遺失物は、遺失物法の定めるところに従い公告をした後3か月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する。
〈相隣関係〉…土地の所有者が隣人に対して行使できる権利や、境界線にかかわる法律関係などに関する規定がある。
〈囲繞地通行権〉(いじょうちつうこうけん)… 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の土地の所有者は、公道に出るためにその土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
例)Aの土地がBの土地に囲まれて公道に通じていない場合。
※ Aの土地がCに譲渡された場合、Cは登記をしていなくても、周りを囲んでいるBの土地を通行できる。
※ Bの土地がCに譲渡された場合、Aは、周りを囲んでいるCの土地を引き続き通行できる。
〈境界線〉… 境界線付近の建築には一定の制限がある。(例えば、建物を築造する場合には境界線から50㎝以上の距離を保つ必要があるなど。)
例)A所有土地の隣にB所有の土地がある場合。
※ Aの庭の木がBの土地にはみ出している時。(枝⇒BはAに切るよう請求できる。)(根⇒Bが切ってよい。)
※ Aが建物補修のためにBの土地を使用したいとき。⇒ 必要な範囲で土地を使用できる。
※ Bが窓を設置する時(Bが境界線から1m未満の場所にAの土地を見通すことができる窓を設置⇒ 目隠しをつける。
※ 境界線上に設けた境界標 ⇒ ABの共有に属すると推定される。
※ 隣地から水が自然に流れてくるのを妨げてはならない。
※ 雨水を隣地に注ぐ構造の工作物の設置をは禁止されている。
※ 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにも関わらず相当な期間内に切除しないとき⇒ 枝を切り取ることができる。
※ 竹木の所有者を知ることができずまたはその所在を知ることができないとき
⇒ 枝を切り取ることができる。
※ 急迫の事情があるとき⇒ 枝を切り落とすことができる。
〈共有関係〉… 1つの所有権を数人で共同して有する時の法律関係
〈共有物の使用〉… 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。
〈共有物の保存〉… 各共有者は、各自単独で保存行為をすることができる。
〈共有物の管理〉… 共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。
〈共有物の変更〉… 各共有者は、他の共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更を加えることはできない。(その形状または効用の著しい変更を伴わないものを除く)〈共有者の中に所在不明の者がいる場合、裁判所に請求することで、所在不明の共有者以外の共有者で共有物の管理や変更を決定することが可能。)
〈共有物についての負担〉… 土地をABCの3人で共有している場合、各共有者はその持分に応じて管理費用などの負担を負う。Cが負担義務を履行しない時は、AやBは、相当の償金を支払ってCの持分を取得できる。(共有者が単独で不法行為に基づく損害賠償請求をすることができるのは、自己の持分の割合に相当する額に限られる。)
〈共有物についての債権〉… 土地をABCの3人で共有している場合、AがCに債権を有している場合、AはCからその持分を売買契約により取得したDに対しても、その債権を行使できる。
〈持分の承継〉… ABCの3人で共有している場合(持分は平等)、持分の譲渡はAの単独でできる。共有物全体の譲渡は単独ではできない。
※ 共有者の1人が死亡した場合、その持分は相続人に承継される。相続人がいあないときは、その持分は他の共有者に帰属する。
〈共有物の分割〉
〈分割請求〉… 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。共有者で協議が整えば、現物分割、換価分割(売却して得た代金を分割)、価格賠償(一人の単独所有とする代わりに、他の所有者にその持分に相当する価格の賠償を支払う方法など。単独所有にしてしまうことを全面的価格賠償と呼ぶ。)
〈分割への参加〉… 共有物について権利を有する者およぶ各共有者の債権者は、自己の費用で、分割に参加することができる。(共有者の債権者に対して分割協議をする旨の通知をする必要はない。)参加の請求があったにも関わらず、その請求をした者を参加させないで分割をしたときは、その分割は、その請求をしたものに対抗することはできない。
〈裁判分割〉… 共有物の分割について共有者に協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。裁判所は、現物分割、価格賠償の方法で分割を命ずることができる。
〈所在等不明共有者の持分の取得〉… 不動産が数人の共有に属する場合、共有者が他の共有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。
〈所有者不明土地・建物〉…所有者不明の土地や建物は、公共事業や民間取引を阻害したり、近隣に悪影響を生じさせたりするなどの問題を生じさせている。民法改正により、利害関係人が裁判所に申し立てることにより、その土地や建物の管理を行う管理人を裁判所が選任することできる制度が設けられた。(所有者不明土地管理命令や所有者不明建物管理命令)
※ 所有者不明管理人は、所有者不明土地等の所有者のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。