16.債務不履行

履行遅滞… 履行期日を過ぎても債務を履行しないこと。

※ 履行遅滞となっている場合、当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債務者の責めに帰するべき事由によるものとみなされる

〈履行遅滞の時期〉
※ 確定期限のある債権… 期限が到来した時
※ 不確定期限のある債権… 債務者が期限到来に履行の請求を受けた時、または期限到来知った時のいずれか早い時。
※ 期限のない債権… 債務者が履行の請求を受けた時


履行不能… 債務の履行が契約その他の債務の発生原因および取引上の社会通念に照らして不能であること。


受領遅滞… 債権者が債務の履行を受けることを拒み、または受けることができないためにその受領が遅れていること

※ 受領遅滞となっている場合、履行の提供があった時以降に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰するべき事由によるものとみなされる

※ 債務の目的が特定物の引渡しであれば、債務者には善管注意義務が要求される。一方、受領遅滞の場合、債務者は、履行の提供をした時からその引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、その物を保存すれば足りるとされている。


損害賠償請求… 債権者は、債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときまたは債務の履行が不能であるときは、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。(契約を解除することできる。)
※ 売買契約の買主は、売主に対し債務の履行を求めるための訴訟の提起等に係る弁護士報酬を債務不履行に基づく損害賠償請求として請求することはできない。

ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因および取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、認められない

〈債務不履行による損害賠償請求〉
1.損害賠償の範囲
※ 通常損害(通常予見し得る範囲の損害)⇒請求できる
※ 特別損害(通常であれば予見しえない範囲の損害)⇒当事者が特別の事情を予見すべきであったときは請求できる
例)債権者に生じた損害は1500万円だったが、通常損害分が900万円+特別損害分が600万円であり、特別損害について債務者は予見不能だった場合⇒900万円

2.過失相殺
※ 債務不履行またはこれによる損害の発生・拡大に関して債権者にも過失があったときは、裁判所はこれを考慮して損害賠償の責任およびその金額を定める。
例)債権者に生じた損害は1000万円だったが、債権者にも過失があり、過失割合は債権者:債務者で2:8だった場合⇒800万円

3.損害賠償の予定
※ 当事者は、債務不履行について損害賠償の額を予定することができる。
例)お互いの合意で債務不履行があったときの賠償額を1000万円と予定した場合の賠償額⇒ 1000万円

〈金銭債務の特則〉
金銭債務不履行(金銭債務の時は履行遅滞のみ)の時は、特別なルールに従う。
※ 物の引渡しが終わっているのに、代金を支払わない場合。
①損害賠償の額は、債務者Bが遅滞の責任を負った最初の時点における利率によって計算する。(約定利率があればそれにより、なければ法定利率の年3%で計算。)
例)100万円の債務を10日遅れた場合。(法定利率で計算)100万×3%÷365日×10日=821円 ⇒ 100万円+821円を支払う。
②債権者は、損害の証明をしなくてよい
③債務者は、不可抗力を抗弁とすることができない。(⇔物の引渡しについて履行が遅れている場合の損害賠償請求では、債権者が損害を証明し、また、不可抗力による遅滞であれば債務者はそれを抗弁とすることができる。)

〈代償請求〉… 債務者が、その債務の履行が不能となったのと同一の原因により債務の目的物の代償である権利または利益を取得した場合、債権者は、その受けた損害の額の限度において、債務者に対し、その権利の移転またはその利益の償還を請求することができる。
※ AB間の建物の売買契約があり、買主Bが代金を支払った後で、目的物であるA所有の建物が火災により引渡し不能となり、AがCから火災保険金を取得した。⇒買主Bは、保険会社Cにたいして、保険金を自分に移転するよう求めることができる。

〈履行の強制〉… 債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、民事執行法その他強制執行の手続に関する法令の規定に従い、直接強制、代替執行、間接強制その他の方法による履行の強制裁判所に請求することができる

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