26.同時履行の抗弁権

双務契約によりお互いに弁済期にある履行すべき債務を負う場合、当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む)を提供するまでは、自分の債務の履行を拒むことができる。(533条)これを同時履行の抗弁権という。

AB間でAが所有する時計についての売買契約が結ばれていた場合。
売主A(お金をもらうまでは物は渡さない。)
売主B(物をもらうまではお金を支払わない。)
※ 売主Bが同時履行の抗弁権を主張している場合、代金支払期日を過ぎていても、債務不履行にはならない。(裁判で債務の履行を請求されたことに対し、同時履行の抗弁権の主張があったときは、互いに債務を履行するべき旨の判決である「引換給付判決」がなされる。)
※ Bの同時履行の抗弁権を奪って、債務不履行とするには、Aは弁済の提供(時計を用意してBに提供)をした上で代金を請求すればよい。
※ Aが一度は弁済の提供をしたが、品物を持ち帰った場合、AがBに再度履行の請求をするときには、Bに再度弁済の提供をする必要がある。(その提供が継続されない限り、同時履行の抗弁権は失われない。


〈同時履行の抗弁権が認められる場合
※ 契約の解除や取消しによる原状回復義務
※ 受領証書の交付と弁済。
※ 建物買取請求権(借地借家法13条)と建物の明渡し
※ 建物買取請求権(蝕知借家法13条)と敷地の明渡し

〈同時履行の抗弁権が認められない場合
※ 弁済と担保権消滅手続。
※ 債権証書の返還と弁済。
※ 造作(空調設備、畳や床など)買取請求権(借地借家法33条)と建物の明渡し
※ 敷金返金と建物の明渡し。


〈危険負担〉
当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。(536条1項)

AB間で建物売買契約を結んだ後、売主Aが買主Bに建物を引渡す前に、AB双方の責めに帰することができない事由(火災など)によって、この建物が滅失したときは、買主Bは、建物がもらえないことを理由に、代金支払債務の履行を拒むことができる


〈第三者のためにする契約〉
契約により当事者の一方第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。(537条1項)

AB間で宝石の売買契約があり、宝石はCに給付することを内容としている場合。
※ Cの宝石をもらう権利は、CがAに対して契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。(537条3項)
※ Cの権利が発生したは、ABの合意で契約の内容を変更したり削減させることはできなくなる。(538条1項)
※ Cの権利が発生したは、Aが債務を履行しない場合でも、Bは、Cの承諾を得なければ、契約を解除することができない。(538条2項)
※ 契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合をした場合、その契約の相手方が第三者に移転する。(539条の2)これを「契約上の地位の移転

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