27.契約の解除

契約したのに相手方が債務を履行しない場合、契約の解除権が発生し、相手方に対して解除の意思表示をすることで、契約を解除することができる


〈催告による解除の要件〉
当事者の一方がその債務を履行しない場合、相手方は、相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、契約を解除することができる。(541条本文)

ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約および取引上の社会通念に照らして軽微であるときは契約を解除することはできない。(543条)

AがBに時計を売却し、Bから代金をもらっていたが、Aが引渡期日になってもまだ時計を渡さないでいた場合。

要件… 債務者が債務を履行しない + ① 債権者は相当の期間を定めて履行の催告をする。② その期間を経過する。③ 債権者が解除の意思表示をする

効果… 契約はなかったことになる。
既履行債務:元に戻す(BはAから代金を返してもらえる。)
未履行債務:履行しなくてよい(BはAに代金を支払わなくてよい。)

※ 債権者が相当な期間を定めないで催告した場合でも、催告の客観的にみて相当な期間を経過したときは、契約を解除できる
※催告の期間内に債務者が履行拒絶の意思を明確に表示した場合は、その期間の満了を待たずに契約を解除できる


〈催告によらない解除の要件〉
債務の全部の履行が不能であるときや、債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときなどには、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる場合もある。(542条1項)
この場合も、債務の不履行が債権者の責めに帰するべき事由によるときは契約を解除することはできない。(543条)

催告によらないで解除ができる場合。(無催告での解除が認められている時)
※ 債務の全部の履行不能であるとき。
※ 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思明確に表示したとき。
※ 債務の一部の履行不能である場合または債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
※ 契約の性質または当事者の意思表示により、特定の日時または一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき
※ 上記のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。


〈解除の効果〉

契約が解除されると、その契約はなかったことになる。そのため、契約の履行として受け取ったものがあれば、それはもとに戻す必要がある。(545条1項本文)。この義務を「原状回復義務」と言う。

当事者間では、原状回復義務が生じるが、第三者がいた場合、その第三者の権利を害することはできない。(545条1項)
※ 他人の自動車の売買があった場合において、買主が契約を解除したときは、買主は売主に対してその自動車の使用収益相当額返還する義務を負う。

Aが土地をBに売却し、Bは同土地をCに転売し、Cは登記をした。BがAに代金を支払わないため、Aが履行遅滞によりBとの契約を解除した場合。
※ 第三者は善意・悪意や過失の有無にかかわらず保護されるが、保護されるためには登記等の対抗要件を備えている必要がある。


〈解除権の不可分性〉
当事者の一方が数人ある場合、契約の解除は、その全員からまたはその全員に対してする必要がある。(544条1項)


〈解除権者の故意による目的物の損傷等〉
解除権者が、解除権を有することを知りながら故意・過失によって、契約の目的物を著しく損傷したり、返還できなくしたときや、加工改造により他の種類の物に変えたときは、解除権は消滅する。(548条)

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