30.売買契約

売買契約は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる契約。(555条)

売主は、買主に対し、売買の目的である権利の移転について登記等の対抗要件を備えさせる義務を負う。(560条)

また、他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。(561条)


契約にあたり手付(解約手付)の授受があれば、相手方が履行に着手する前なら、買主は支払った手付を放棄して、売主は受け取った手付の倍額を現実に提供して自分の都合で契約を解除することが認められている。(557条1項)
これは、正当な権利の行使なので、債務不履行とはならない

AがBに対して土地を2000万円で売却する契約をし、BがAに手付として100万円支払っていた場合。契約を解除するには…
※ 買主Bは、Aが履行に着手するまでならAに渡した手付金の100万円を放棄すれば解除できる(手付損)
※ 売主Aは、Bが履行に着手するまでならBからもらった手付金の倍額の200万円を現実に提供することで解除できる。(手付倍返し)


〈契約内容不適合の場合〉
履行の追完請求… 引き渡された目的物の種類品質数量について、契約の内容に適合しないものである場合、買主は売主に対し、目的物の修補代替物の引渡し不足分の引渡しといった履行の追完を請求できる。(562条1項本文)
移転した権利が契約の内容に適合しないときも同様に履行の追完を請求できる。(565条)
ただし、不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、履行の追完請求をすることはできない。(562条2項)

AがBにA所有の時計を売却し、AからBに引き渡せれた時計の品質が契約の内容に適合しないものであったとき、履行の追完請求する場合。
※ 買主は、売主に対して、履行の追完請求ができる。(562条1項本文)
※ 売主は、買主に不相応な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。(562条1項ただし書)


〈代金減額請求〉
買主が売主に対して履行の追完請求ができる場合、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求できる。(563条1項)
ただし、不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、代金の減額請求をすることはできない。(563条3項)

AがBにA所有の時計を売却し、AからBに引き渡せれた時計の品質が契約の内容に適合しないものであったとき、代金の減額請求をする場合。
※ Bは、Aに対して、相当の期間を定めて履行の追完を催告し、その期間内に履行の追完がないときは、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求できる。

催告によらないで代金減額請求ができる場合。
※ 履行の追完が不能であるとき。
※ 売主が履行の追完を拒絶する意思明確に表示したとき。
※ 契約の性質または当事者の意思表示により、特定の日時または一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
※ 上記のほか、買主が催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。


〈期間制限〉
目的物の種類および品質が契約の内容に適合しないものであった場合、履行の追完請求代金減額請求損害賠償請求契約の解除をするなら、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知することが必要。(566条本文)
ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知りまたは重大な過失によって知らなかったときは、その通知を1年以内にする必要はない。(566条ただし書)。


〈目的物の喪失等についての危険の移転〉
特定物の売買において、目的物の引渡し後に、当事者双方の責めに帰することができない事由によって目的物が滅失損傷した場合、買主は、履行の追完請求や代金減額請求をすることはできず、また、代金の支払いを免れることもできない。(567条1項)


〈他人の権利の売買〉
他人の権利を売買の目的としたときでもその契約は有効。この場合、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。(561条)


〈代金・費用・果実・利息〉
売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払について同一の期限を付したものと推定される。(573条)
また、売買の目的物の引渡しと同時に代金を支払うべきときは、その引渡しの場所において支払うものとされている。(574条)
売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。(558条)
まだ引き渡されていない売買の目的物が果実を生じたときは、その果実は、売主に帰属する。(575条1項)
一方、買主は、引渡しの日から代金の利息を支払う義務を負う。(575条2項本文)


〈買戻し〉
不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金および契約の費用返還して、売買契約を解除することができる。(579条前段)

PAGE TOP