37.不当利得

不当利得… 受益者の不当な利得損失者に返還すべきとの観点から、そこに債権債務関係(返還請求権)を発生させるためある概念。(支払う必要がないのに間違えて支払ってしまったときなど)

〈不当利得の要件と効果〉
法律上の原因はなく他人の財産または労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益を返還する義務を負います。(703条、704条)

Bは、Aと契約して代金を支払う義務があったわけではないが、間違えてAに50万円を支払ってしまった場合。

要件… ① 受益者が他人の財産・労務により利益を受けたこと。② 他人に損失があること。③ 受益と損失の間因果関係があること。④ 法律上の原因がないこと。

効果… 返還請求権の発生
善意の受益者⇒ 現存する利益の返還でよい。
悪意の受益者⇒ 受けた利益に利息などを加えて返還
※ 704条では、悪意の受益者の場合、受けた利益に利息を付して返還しなければならず、なお損害があるときはその賠償責任も負うことが規定されている。


〈不当利息の特則〉
※ 非債(ひさい)弁済… 
債務の存在しないことを知って給付した場合、その給付したものの返還を請求できない。(705条)(この場合、弁済は任意にされたものであることが必要であり、強制執行を避けるためやむを得ず弁済をした場合、705条の適用はなく、不当利得の返還請求できる。大判大6.12.11)

※ 期間前弁済… 
債務者が、弁済期にない債務の弁済として給付したときは、その弁済は有効となり、その給付したものの返還を請求できない。(706条本文)

※ 他人の債務の弁済… 
債務者でない者錯誤によって債務の弁済をした場合でも、債権者が善意証書を滅失・損傷し、担保を放棄し、または時効によってその債権を失ったときは、その弁済は有効となり、その給付したものの返還を請求できない。(707条1項)

※ 不法原因給付
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求できない。(708条本文)

Aが愛人契約の維持のためにBにマンションを贈与した場合(登記も移転済)
不法原因のための給付した者⇒ 返還を請求できない。
※ 登記不動産の場合: 引渡しは「給付」にあたる
※ 登記不動産の場合: 引渡しのみでは「給付」にあたらず所有権移転登記が「給付」にあたる

※ 騙取金弁済
債務者が第三者からだまし取ったお金で債権者に弁済した場合(騙取金弁済)、債権者悪意または重過失があるときは、第三者は、債権者に対して不当利得返還請求できる。(最判昭49.9.26)

※ 転用物訴権
契約上の給付が契約の相手方(建物の修理を頼んだ人)以外第三者の利益(建物の所有者)となる場合、契約の相手方からその給付の対価を得られなかった者(建物を修理した人)から、当該第三者に利得の返還を請求する権利のこと。

AB間でA所有建物Bに賃貸する契約が結ばれ、Bから修理を頼まれたCがこの建物を修理したが、Bが無資力となり修理代金がまだ回収できていないとき。Cは、Bとの賃貸借契約を解除して建物を取り戻したAに対して、不当利得として修理代金相当額を請求できる
※ 賃貸借契約を全体として見て賃貸人が対価関係なしに利益を受けたといえるなら、不当利得返還請求できる。(最判平7.9.19)

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