動産取引の場合、取引の相手方が無権理者だったとしても、一定の要件を満たせば即時取得によってその動産についての権利を取得できる仕組みがある。売主の占有を信じて取引をした場合、その取引を保護するための制度が即時取得制度です。
〈所有権の即時取得〉
Bが所有者Aから借りている物を、売る権限もないのにCに売却した場合。Cが所有権を取得できるには、4つの要件を満たすことが必要。
〈要件〉①動産であること②BC間の有効な取引であること。③Bに処分権限がないこと。③Cが平穏・公然・善意無過失であること。④Cが占有を開始したこと。
〈効果〉Cは所有権を取得できる(原始取得)
※ 不動産は即時取得の対象ではない。
※ 拾得、相続、伐採などのように、取引をせずに動産を得た場合は即時取得の対象ではない。
※ 制限行為能力者との取引など取引自体に問題があるときは、即時取得の対象でない。
※ 代物弁済や贈与でも即時取得の対象となる。
※ 占有改定では即時取得できない。
〈回復請求〉
※ 前主の占有物が盗品または遺失物であるときは、即時取得された場合でも、盗難の被害者または遺失主は、その動産の権利を自分に回復させることを請求できる。(193条)
Bが所有者Aから盗んだものを売る権限もないのにCに売却した場合、Aが回復請求により動産を取り戻すには、3つの要件を満たすことが必要。
〈要件〉①即時取得が成立していること。②盗品または遺失物であること。③盗難または遺失の時から2年を経過していないこと。
〈効果〉Aは回復請求により動産を取り戻すことができる。
※ 即時取得者が、競売もしくは公の市場において、またはその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、盗難の被害者または遺失主は、回復請求にあたり、即時取得者が支払った代価の弁償をすることが必要。(194条)