留置権… 他人の物の占有者に、その物について生じた債権の弁済を受けるまでその物を留置することを認めた権利。(契約で設定するのではなく、法律上当然に認められる権利)
〈留置権の成立〉… 留置権は、法定担保物件で、一定の要件を満たすことで成立する。
※ BはAに車の修理を依頼して、Aは修理を完了したが、Bは代金を支払わずに所有権に基づき車の返還請求をしてきた。
〈Aに留置権が成立するための要件〉①その物に関して生じた債権を有すること。②他人の物を占有していること。③債権が弁済期にあること。④占有が不法行為によって始まったものではないこと。
〈効果〉… 物の返還を求められても、その物を留置できる。
※ 留置権は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。(善管注意義務)
※ 留置権者は、債務者の承諾なく、留置物の使用・賃貸・担保供与することはできない。
※ 善管注意義務違反があったときや、無断使用があった場合は、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。
〈重要判例〉
※ 建物賃貸借契約があり、敷金を差し入れた場合、契約終了後に、敷金の返還を被担保債権とする留置権は成立しない。
※ 不動産の二重譲渡において、第二譲受人のために登記があった場合、第一譲受人は、譲渡人に対する損害賠償請求権を被担保債権とする留置権は成立しない。
※ 他人物売買契約により引渡しを受けたが、真の所有者はこの契約を認めていない場合、買主の売主に対する損害賠償請求権を被担保債権とする留置権は成立しない。
※ 賃貸借契約解除後に賃借人が建物を不法に占拠している間に支出した費用償還請求権を被担保債権とする留置権は成立しない。
〈留置権の対抗要件〉… 留置権の対抗要件は占有。占有を継続していれば留置権成立後に所有者が変わっても留置権を第三者にも対抗できる。
(不動産売買において、譲受人が登記を済ませた後、代金を支払わないで、第三者に転売しさらに登記を済ませた場合、第三者からの引渡し請求に対して、代金債権を保全するために留置権を行使することができる。