債権者代位権… AがBに対して債権を有しているが、Bが無資力(債務超過の状態であること)の時、BがCに対して有している債権を、AはBに代わってCに対してその権利を行使すること。(AはBを代位してBの権利を行使できる。)
〈代位行使の対象〉… 債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利を行使できる。
Aが債権者代位権により代位行使できる対象
※ BのCに対する債権が金銭債権⇒ 〇
※ BのCに対する債権が取消権や解除権などの形成権⇒ 〇
※ BのCに対する債権が登記請求権などの物権的請求権⇒ 〇
※ BのCに対する債権がBの一身専属的な権利(B自身が判断すべき権利)⇒ ×
※ AのBに対する債権が強制執行により実現できないものである⇒ ×
〈被保全債権の弁済期〉… 債権者は、その債権の期限が到来する前に、被代位権利を行使することはできない。保存行為の場合は、期限到来前でも代位行使することができる。(時効の更新、未登記の権利の登記申請など)
〈債務者の無資力〉… 金銭債権保全の場合、債務者が無資力であることが必要。(債務者に債務を弁済するだけの視力があれば、第三者債務に対して権利を行使する必要がないから。)
〈債権者代位権の行使〉
AがBに対する債権を保全するため、BがCに対して有している債権をAが代位行使する場合
※ 行使の方法… 裁判上の行使⇒ 〇、裁判外の行使⇒ 〇(AからBに手紙を送るだけでもよい。)
※ 行使の範囲… 金銭のように可分な場合に被保全債権を超える行使をすること⇒ ×(AB債権の額だけ、BC債権に対して代位できる。)、不動産のように不可分な場合に被保全債権を超える行使をすること⇒ 〇
※ 直接給付… 金銭を支払わせる⇒ 〇、動産を引き渡させる⇒ 〇、不動産登記を移転させる⇒ ×(BC債権が登記移転を請求する権利だったとしても、CからBに移転させられるだけで、CからAに直接登記を移転できるわけではない。)
〈訴訟告知〉… 債権者Aが、被代位権利(BのCに対する債権)についてCを被告として訴えを提起した場合、遅滞なく、債務者Bに対し、訴訟告知をしなければならない。(Bの訴訟参加の機会を奪わないようにするため。)
〈債権者代位権行使の効果〉… 債権者Aが、被代位権利(BのCに対する債権)を行使する場合、被代位権利が金銭の支払いまたは動産の引渡しを目的とするときは、Cに対し、金銭の支払いまたは動産の引渡しを自己に対して求めることができる。 (Cが、支払いまたは引渡しをしたとき、被代位権利は消滅する。)
〈相手方の抗弁〉… 債権者Aが、被代位権利(BのCに対する債権)を行使したときは、相手方Cは、債権者Bに対して主張することができる抗弁をもって、債権者Aに対抗することができる。
〈債務者の権利行使〉… 債権者Aが、被代位権利(BのCに対する債権)を行使した場合でも債務者Bは、被代位権利について、自ら取り立てその他の処分をすることもでき、この場合、相手方Cも、被代位権利について、債務者Bに対して履行することもできる。
〈債権者代位権の転用〉
※ 移転登記請求権… C所有の土地をBに売却し、その土地をBからAに売却された場合。CからBの登記を移転していなかったときは、AがBがCに対して有する移転登記請求権を代位行使することができる。(AはCに対して、直接登記を自分に移転させるよう請求することはできない。また、金銭債権ではないので、Bの無資力は不要。)
※ 妨害排除請求権… 土地所有者が所有権に基づいて不法占拠者による妨害排除を請求する権利も債権者代位権の行使の対象となる。
(AがB所有の土地を借りることになったが、その土地をCが不法占拠している場合。⇒賃借人Aは、賃借権を保全するために、Bが有する所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使することができる。また、賃借権が対抗要件を備えていれば、賃借権に基づく妨害排除請求もできる。)