40. 親子

〈嫡出推定〉
妻が婚姻中に懐胎した子、女が婚姻前に懐胎した子であって婚姻が成立した後に生まれた子は、当該婚姻における夫の子と推定される。(772条1項)

婚姻の成立の日から200日以内に生まれた子は婚姻に懐胎したものと推定し、婚姻の成立の日から200日を経過した後または婚姻の解消・取り消しの日から300日以内に生まれた子は婚姻に懐胎した者と推定される。(772条2項)
※ 女が子を懐胎したときから子の出生の時までの間に2以上の婚姻をしていたときは、その出生の直近の婚姻における夫の子と推定される(772条3項)
※ 婚姻中の妻に子が生まれたが、夫が服役中であったり海外出張中であり妻と長年会っていなかったなどの事情がある場合、嫡出推定は及ばない。


〈嫡出否認の訴え〉
妻に子が生まれて嫡出推定が及ぶ場合、夫がその子との父子関係を否定したい場合直出否認の訴えにより、父子関係を否定することができる

提訴権者… ① 父 ② 子(親権を行う母、親権を行う養親、未成年後見人が子のために行使できる。) ③ 母(否認権の行使が子の利益を害することが明らかなときは不可。) ④ 前夫(否認権の行使が子の利益を害することが明らかなときは不可。)

相手方… ① 父⇒子または親権を行う母 ② 子⇒父 ③ 母⇒父 ④ 前夫⇒ 父および子または親権を行う母

提訴期間… ① 父(父が子の出生を知った時から3年以内。) ② 子(その出生の時から3年以内。) ③ 母(子の出生の時から3年以内) ④ 前夫(前夫が子の出生を知った時から3年以内。)
※ 再婚後の夫の子と推定される子について、前夫も嫡出否認の訴えを提起できる。


〈親子関係不在確認の訴え〉
嫡出推定が及ばない子との親子関係を否定する場合、親子関係不在確認の訴えにより、親子関係を否定することができる。(提訴期間を限定する規定はない。)


〈父を定めることを目的とする訴え〉
重婚禁止の規定(732条)に違反して婚姻をした女が出産した場合、嫡出推定の規定(772条)によりその子の父を定めることができないときは、裁判所がこれを定める。(773条)


〈認知〉
認知は、非嫡出子との間に法律上の親子関係を創設する制度。
※ 認知の無効の訴えの提訴権者は、子またはその法定代理人、認知した者(父)、子の母に限定されている。
※ 判例は、非嫡出子につき嫡出子出生届を提出して受理されたときは、嫡出子出生届としては無効だが、これを認知届としての効力を持たせることができるとしている。(最判昭53.2.24)


〈利益相反行為〉
親は、未成年の子を代理する権限を持つ。(法定代理)
ただし、親と子の間で利益が相反する行為については、親は子を代理する権限を有しないものとされている。(826条1項)この場合、特別代理人を選任する必要があり、親が勝手に子を代理しても、それは無権代理として扱われる。(108条2項)
※ 子A(15歳)の法定代理人である母Bが、自分が借金をするため、Aが所有する土地にAを代理して抵当権設定契約をしようとすることは、利益相反行為に該当し、この場合、母Bでは子Aの抵当権設定契約を代理することはできず、勝手に代理すると無権代理となる。(108条2項)


〈養子〉
養子縁組とは、血縁関係とは無関係に他人同士に親子関係を発生させる行為のこと。養子縁組によって設定された親を「養親(ようしん)」子を「養子」という。

〈普通養子〉
養子縁組の意思の合致養子縁組の届出をすることで、法律上の親子関係を設定することができる。(養親の年齢要件は、20歳以上
※ 尊属または年長者を養子とすることはできない。(793条)違反した場合は、その取消しを家庭裁判所に請求できる。(805条)
※ 判例では、真実の親子関係のない親から嫡出子出生届が提出されても、この届出をもって養子縁組の届出があったものとはできないとしている。(最判昭和25.12.28)

☆ AB夫婦が、C(22歳)を養子とする場合。
要件… ① 養子縁組意思の合致 ② 養子縁組の届出
効果… 
※ 養子縁組の日からAB夫婦の嫡出子となる。(CがABの養子となっても、実母との関係は終了しない。)
※ Cは、AB夫婦の名字を称する

☆ AB夫妻が、未成年者のC(15歳)を養子とする場合。
要件… 
※ 家庭裁判所の許可が必要(798条本文)
※ 夫婦共同縁組によることが必要(795条本文)
※ 15歳未満の子を養子とするときは、法定代理人が代わりに縁組の承諾をできる。(代諾縁組:797条1項)


〈特別養子〉
家庭裁判所の審判によって成立し、実の父母との親子関係を終了させ養親との親子関係だけにする効果を持つ養子縁組制度。(817条の2第1項)

AB夫婦がCを特別養子とする場合。
要件…
① 夫婦共同縁組によること
② 夫婦の一方が25歳以上であること
③ 子は15歳未満であること
(以前から監護している場合なら、15歳未満までに請求できなかったやむを得ない事由があるときは、15歳以上でもできる。この場合、15歳以上の子の同意も必要。また審判確定時に18歳未満でなくてはならない。)
④ 実方の父母の同意があること
⑤ 6か月以上の試験養育機関があること
⑥ 子の利益のために特に必要であること
⑦ 養親となるものの請求家庭裁判所の審判により成立
効果…
※ Cは、養子縁組の日からAB夫婦の嫡出子となる
※ Cは、AB夫婦の名字を称する
※ Cの実親との親子関係は終了する

〈特別養子縁組の離縁〉
特別養子縁組の離縁は、① 養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること、かつ ② 実父母が相当の監護をすることができること のいずれにも該当する場合において、養子の利益のため特に必要があると認めるときに、養子、実父母、検察官の請求により、家庭裁判所によって行われる。(817条の10第1項)

PAGE TOP