5. 公物

 道路や公園など、国や公共団体によって、直接に公の目的のために供されている物のことを公物という。
※ 公物は誰が所有しているかではなく、国や公共団体によって直接公の用に供されていることを特徴とする概念。
※ 公物の供用行為により生じた損害は公物の管理者が賠償責任を負う。利用者との関係で適正であっても、第三者に対して損害を及ぼしたときも同様。


〈用途による分類〉

※ 一般公衆の共同使用に供される公物を公共用物という。(道路、河川、公園)
※ 国または公共団体の公用に供される公物を公用物という。(官公署の建物)

〈所有者による分類〉

※ が所有している公物を国有公物という。
※ 公共団体が所有している公物を公有公物という。
※ 私人が所有している公物を私有公物という。

〈設置態様による分類〉

※ 行政主体が加工を加え、意図的に使用させること(公用開始行為)によって公物となる公物を人工公物という。(道路)
※ 自然の状態ですでに使用させることができる公物を自然公物という。(最初から公物なので、行政行為である公用開始行為という観念はない。)

〈利用者による分類〉

※ 一般公衆に共同で使用させる公物を公共用物という。(道路、河川、公園)
※ 国または地方公共団体に使用させる公物を公用物という。(官公署の建物や敷地)

〈公物と取得時効〉

公物を私人が長年にわたり占有していた場合、その私人に時効による取得が認められることもある
(公園予定地など予定公物も時効取得が認められることもある。)
(黙示的でも明示的でも公用廃止されたら、どちらも時効取得できる。)

事実上公の目的に使用されることなく放置されていた公物をAが占有している場合
※ 公物が明示的に公用廃止(公物として使用させることをやめること)された場合、Aはこの公物を時効で取得できる
※ 公物が黙示的な公用廃止が認められる場合、Aはこの公物を事項で取得できる


〈判例〉
※ 公共用財産が、長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置され、公共用財産としての形態、機能をまったく喪失し、その物のうえに他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されるようなこともなく、もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合には、黙示的に公用が廃止されたものとして、これについて取得時効の成立を妨げない。(最判昭51.12.24)
※ 竣工未認可埋立地が、長年にわたり事実上公の目的に使用されることもなく放置され、公共用財産としての形態、機能を完全に喪失し、その上に他人の平穏カツ公然の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されるようなこともなく、これを公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合には、もはや原状回復義務の対象とならず、当該埋立地は、公有水面に復元されることなく私有上所有権の客体となる土地として存在することが確定し、同時に、黙示的に公用が廃止されたものとして、取得時効の対象となる。(最判平17.12.16)

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