7.行政立法

〈行政作用〉
国や地方公共団体などの行政主体が、一定の行政目的を実現するために行う行為全体のことを行政作用という。

〈行政作用の分類〉

行政行為⇒ 行政庁が、法律に基づき、権力的に、特定の国民の権利義務を変動させる行為のこと。
行政立法⇒ 行政機関が定めるルールのこと。
行政計画⇒ 行政機関が、将来の一定期間内に到達すべき目標を設定し、そのために必要な手段の調整のために策定する計画のこと。
行政指導⇒ 行政機関から、相手方に対して、任意の協力を求めて働きかけること。
行政計画⇒ 行政主体を当事者の一方、または双方とする契約のこと。
行政調査⇒ 行政目的達成のために行う情報取集活動のこと。

〈行政手続法の規定の有無〉
行政手続法の規定がある⇒ 行政行為(処分)、行政指導、行政立法(命令等の策定)
※ 行政手続法は、処分、行政指導、届出、命令等の制定(行政立法)の4つを対象としている。(行政手続法1条1項)

行政手続法の規定がない⇒ 行政計画、行政契約、行政調査



〈行政立法の具体例〉

行政立法は、行政機関が定めるルールのことで命令ともいう。

内閣が制定するルールを政令という。
各省大臣が制定するルールは省令という。
各局において各委員会や各庁の長官が制定するルールを規則という。
※ 法律で制定すべきものだが、細かいところまでは決めることができないので、行政自ら立法して、細かいルールを定めることが認められている。
※ 政令、省令、規則にも、法律の委任があれば、罰則を設けることができる。
※ 行政手続法では、命令等の制定にあたっては意見公募手続を実施すべき旨を定める規定が置かれている。(行政手続法39条1項)

〈法律と政令の関係〉

法律(道路交通法)
「信号機の表示する信号の意味その他信号機について必要な事項は、政令で定める。」(法律で政令に委任している。)

政令(道路交通法施行令)(行政立法で必要な事項を定める。)
青色:歩行者は進行することができる
青色の点滅:歩行者は道路の横断を始めてはならず、また、道路を横断している歩行者は速やかにその横断を終わるか又は横断をやめて引き返さなければならない。
赤色:歩行者は道路を横断してはならない。



〈効力による行政立法の分類〉
※ 行政規則は、法規命令と違って、法律の根拠(法律の委任)はなくても制定できる。
※ 告示、訓令・通達、行政手続法上の審査基準・処分基準・行政指導指針など、行政内部のルールであって、国民の権利義務に直接影響を及ぼさないものは、行政規則に分類される。
※ 告示は、行政機関が意思決定や事実を公に知らせる形式だが、法的拘束力をもつものは法規命令と位置付けられ、法的拘束力をもたないものは行政規則と位置付けられる。

~ 法規命令(国民の権利義務に直接影響を与える)~
※ 法規の性質を有する命令なので、法律の根拠が必要。法規とは、国民の権利義務に関する法規範のこと。

委任命令⇒ 法律の個別具体的な委任により、私人の権利義務の内容自体を新たに定める命令。
執行命令⇒ 権利義務関係の内容それ自体ではなく、その内容実現のための手続(実施に必要な具体的細目)を定める命令。

~ 行施規則(国民の権利義務に直接影響を与えない)~
※ 法規の性質を有しない命令で、法律の根拠は不要

行政規則⇒ 国民の権利義務に直接影響を及ぼさない命令。


〈通達〉
 上級行政機関が下級行政機関の権限行使について指揮するために発する命令のことを訓令という。訓令を書面でする場合の書面のことを通達という。
※ 通達は法規の性質はもたない。
※ 通達は、当該機関・職員に対する行政組織内部における命令にすぎないから、これらの者がその通達に拘束されることはあっても、一般の国民は直接これに拘束されるものではない。
※ 裁判所は、法令の解釈適用にあたっては、通達に示された法令の解釈とは異なる独自の解釈をすることができる。


〈判例〉
※ 監獄法施行規則が、原則として14歳未満の者との接見を許さないとすることは、監獄法が原則として接見を許し、接見ができないときはどのようなときかを定めるよう委任したことに対し、その範囲を逸脱する。(最判平3.7.9)
※ 児童扶養手当施行令が、「父から認知された児童」を児童扶養手当の支給対象から除外していることは、児童扶養手当法が支給が必要な者はどのような者か定めるよう委任したことに対し、その範囲を逸脱する。(最判平14.1.31)
※ 薬事法施行規則が、店舗販売業者に対し、一般用医療薬品のうち第一類医薬品・第二塁医薬品について当該店舗において対面で販売させまたは授与させなければならないものとし、当該店舗内の情報提供を行う場所において情報の提供を対面により行わせなければならないものとし、郵便等販売をしてはならないものとしていることは、郵便等販売を一律に禁止することとなる限度において、薬事法の委任の範囲を逸脱する。(最判平25.1.11)
※ 地方自治法85条1項は公職選挙法中の普通地方公共団体の選挙に関する規定を「解職の投票」に準用する旨を定めているので、同規定に基づき政令で定めることができるのも「解職の投票」についてであり、「解職請求」についてまで政令で規定することを許容するものということはできず、地方自治法施行令が公職の候補者の資格について準用し、公務員について解職請求代理者となることを禁止していることは、政令の定めとして許される範囲を逸脱する。(最大判平21.11.18)
※ 銃砲刀剣類登録規則が、登録の対象となる刀剣類の鑑定基準として、美術品として文化財的価値を有する日本刀に限ることは、銃砲刀剣類所持等取締法が登録することで刀剣類の所持を認め、登録にあたりその鑑定基準を定めるよう委任したことに対し、その範囲を逸脱しない。(最判平2.2.1)
※ 幅4m未満の道でも建築基準法の規定により行政庁の指定したものは建築基準法上の「道路」とみなされ、この指定が一括指定の方法でされるとしても、個別の土地に対する私権制限という効果を生じさせるものであり、個人の権利義務に対して直接影響を与えるものといえ、抗告訴訟の対象となる処分に該当する。(最判平14.1.17)
※ 国家公務員法が人事院規則に委任しているのは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる政治的行為の行為類型を規制の対象として具体的に定めることであるから、国家公務員法が懲戒処分の対象と刑罰の対象とで殊更に区別することなく規制の対象となる政治的行為の定めを人事院規則に委任しているからといって、憲法上禁止される白紙委任にあたらない。(最判平24.12.7)(白紙委任とは、委任するときに何の制限もかけないですべてを任せること)

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