行政手続法では、行政指導についても、定義、注意点、方式などのルールが定められている。(行政機関が、一定の目的を実現するため、特定の者に対して行う。一定の作為または不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為のうち、処分に該当しないもの。)
〈行政手続法32条~35条〉
※ 行政機関が、任務または掌握事務の範囲内で行政指導を行う。
※ 行政指導に対しては、任意の協力で従う。
※ 行政指導をするときは、趣旨・内容・責任者を明確に示さなければならない義務がある。(35条1項)(努力ではなく義務であることに注意)
※ 相手が行政指導に従わなかったことを理由として不利益な取扱いをしはならない。(32条2項)
※ 申請者が申請取下げの指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず指導を継続するなどして申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない。(33条)
※ 許認可権の行使をしうる場合にその旨を示すときは、① 当該権限を行使しうる根拠法令の条項、② その要件、③ その要件に適合する理由を示すことができる。
※ 許認可権の行使ができない場合なのに、当該権限を行使しうる旨を殊更に示すことで、相手方に指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはならない。(34条)
※ 行政指導の相手方から書面の交付を求められたときは、行政上特別の支障のない限り、書面を公布することが必要。(35条3項)(相手方に対してその場において完了する行為を求めるものや既に文書等によりその相手方に通知されている事項と同一の内容を求めるものの場合、書面交付は不要。)
〈行政指導指針〉
行政機関が、複数の者に対して同一の行政目的の実現のために行政指導をするときに、人によってばらばらの対応にならないようにするために作られたのが、行政指導指針。
※ 行政指導指針を定めることも、定めた行政指導指針を公表することも、法定義務規定。(行政上特別の支障があるときは公表しなくてもよい。〈36条〉)
〈行政指導中止の求め〉
法令に違反する行為の是正を求める行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る)の相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思えば、当該行施指導をした行政機関に対し、その旨を申し出て、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。(36条の2第1項本文)
(違法な行政指導の中止を求める制度は、平成26年の行政手続法改正で設けられた。行政指導は、処分ではないので、取消訴訟や行政不服審査法による審査請求の対象にはなっていないけれど、いやなら従わなければいいだけという話になる。従わないことで、その旨が公表されたり、相手の権利利益に影響を及ぼすことも考えられるので、そのために行政指導中止の求めがある。)
※ 行政機関に行政指導中止の求めをするときは、当該行政機関に申出書を提出します。
※ 対象となる行政指導は、その根拠となる規定が法律に置かれているものに限られる。(36条の2第1項)
※ 行政機関は、この申出があったときは、必要な調査を行い、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと認めるときは、当該行政指導の中止その他必要な措置をとらなければならない。(36条の2第3項)
※ 行政指導がその相手方について弁明その他意見陳述のための手続きを経てされたものであるときは、行政指導の中止の求めの対象にはならない。(36条の2第1項ただし書)。