15.公法と私法

法律が憲法に違反するとき、法律の内容は無効になる。
法律と法律で矛盾するときは、特別法の規定が適用。特別法に規定がなければ、一般法の規定を適用。

※ 行政手続法(一般法)では、行政処分を行うときは、書面でも口頭でもよいとされているが、個別法(特別法)では、書面で行うとされているとき。
⇒ 書面で行う。(特別法が優先される。)

※ 行政手続法では、理由も書面で示すとされているが、個別の法規には規定がないとき。 ⇒ 理由も書面で示す。(一般法で補充)


〈私法法規の適用〉
公法とは、国家と私人の関係をルール化した法のこと。
私法とは、私人間の関係をルール化した法のこと。

~ 公営住宅の使用関係 ~ (使用権の相続)
公営住宅の使用権は、一身専属的なものであり、入居者が死亡した場合、民法の相続の規定は適用されない。その相続人が公営住宅を使用する権利を当然に承継することにはならない。(最判平2.10.18)
※ 公営住宅法が特別法として民法に優先して適用される。特別法に規定がないときに、民法が適用される。契約関係の規律については、信頼関係の法理の適用がある。(最判昭59.12.13)(公営住宅法に規定がなくても、賃貸借契約にはお互いの信頼関係を基礎として成り立つと考える法理がある。)

~ 建築基準法関係 ~ (隣地境界線)
民法では、建物を築造するには境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならないとされている。(民法234条1項)、建築基準法63条は、防火地域または準防火地域にある外壁が耐火構造の建築物について、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる旨を規定している。建築基準法民法に優先して適用され、同条所定の建築物については、50センチメートル以上の距離を保たなくても建物を築造できる。(裁判平元.9.19)

~ 道路位置指定 ~
建築基準法42条1項5号の規定による道路位置指定(私道に対し、位置指定することで建築基準法上の道路として扱うこと)を受け現実に開設されている道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は、道路の通行をその敷地の所有者によって妨害されたときは、敷地所有者に対して妨害行為の排除を求める権利を有する。(最判平9.12.18)(柵を設置して通れなくしている場合、柵を外すように求めることができる。)

~ 国税滞納処分 ~
国税滞納処分において滞納者の財産を差し押さえた国の地位は、民事訴訟法上の強制執行における差押債権者の地位に類するものといえる。そのため、滞納処分による差し押さえの関係においても、民法177条の適用があるといえる。(最判昭31.4.24)
※ 民法177条では、不動産に関する物権の得喪およぶ変更は、登記をしなければ、第三者に対抗することができないことが規定されている。

~ 農地買収処分 ~
自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分は、国家が権力的手段をもって農地の強制買上を行うものであり、対等の関係にある私人相互の経済取引を本旨とする民法上の売買とは、その本質を異にする。そのため、私経済上の取引の安全を保障するために設けられた民法177条の適用はないという。(最大判昭28.2.18)
ただし、国が農地買収により所有権を取得した後においては、民法177条の適用はあるといえる。(最判昭41.12.23)


〈判例〉

※ 国の公務員に対する安全配慮義務の債務不履行に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間は、会計法ではなく、民法の規定に基づいて判断される。(最判昭50.2.25)
※ 公立病院の診療の法律関係は、私法関係の性質を有するものであり、公立病院の診療に関する債権の消滅時効期間は、民法の規定に基づいて判断される。(最判平17.11.21)
※ 民法1条2項で規定されている信義則(信義誠実の原則)は、行政上の法律関係においても適用され、租税法規に適合する課税処分について、信義則の法理の適用により、課税処分を違法なものとして取り消すことができる余地を認めている。(最判昭62.10.30)(租税法規に適合する課税処分について、信義則の法理の適用については慎重でなければならず、租税法規の適用における納税者間の平等や公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に初めてその法理の適用の是非を考えるべきものといえる。)
※ 地方議員の議員の報酬請求権は、公法上の権利だが、その譲渡性は否定されない。(最判昭53.2.23)
※ 生活保護法によるt保護受給権は、被保護者自身の最低限度の生活を維持するために当該個人に与えられた一身専属の権利であり、譲渡することはできない。(最大判昭42.5.24)
※ 労働者のじん肺に係る労災保険給付を請求する権利は、一身専属の権利とはいえず。訴訟係属中に本人が死亡した場合、相続人による訴訟承継が認められる。(最判平29.4.6)
※ 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づく認定の申請がされた健康管理手当の受給権は、一身専属の権利とはいえず、訴訟係属中に本人が死亡した場合、相続人による訴訟承継が認められる。(最判平29.12.18)

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