処分にあたり、審査請求に関する一定事項を教えてあげる制度が教示という制度。
行政庁が、審査請求ができる処分をするとき。
〈処分の相手方にする教示〉
行政庁は、審査請求をすることができる処分をする場合、処分の相手方に対し、① 審査請求できる旨、② 審査請求の宛先となる行政庁、③ 審査請求できる期間、を書面で教示しなければならない。
※ 処分が口頭でされる場合は、教示は不要。
〈利害関係人の請求による教示〉
行政庁は、利害関係人から、① 審査請求をすることができるかどうか、② 審査請求をすべき行政庁、③ 審査請求をすべき期間、につき教示を求められたときは、当該事項を教示しなければならない。
※ 教示を求めた者が書面による教示を求めたときは、当該教示は書面でしなければならない。(82条3項)
※ 行政庁が必要な教示をしなかった場合、処分に不服がある者は、当該処分庁に不服申立書を提出すればよい。(83条)
〈誤った教示があった場合の救済〉
~ 審査請求の宛先が誤って教示された場合 ~
審査請求できる処分をするときに、審査請求先の行政庁を誤って教示した場合。(22条1項)その教示に従い、審査請求人が、誤った審査請求先に審査請求したときの効果。⇒ 審査請求書が審査庁となるべき行政庁に送付されることで、本来の審査庁に審査請求されたものとみなす。(22条5項)
※ 処分庁Aからの処分について本当は行政庁Bに審査請求しなければならないのに、誤った教示により行政庁Cに審査請求したとき、行政庁Cは、審査請求書を審査庁Bまたは、処分庁Aに送付して、その旨を審査請求人に通知しなければならない。(22条1項)その結果、最初から、審査庁Bに審査請求がされたものとみなされる。(22条5項)
~ 再調査の請求ができない処分なのに、誤ってできる旨を教示した場合 ~
再調査の請求ができない処分なのに、誤って再調査の請求をすることができる旨を教示した場合。(22条3項)その教示に従い、審査請求人が、処分庁に再調査の請求をしたときの効果。⇒ 再調査の請求が審査庁となるべき行政庁に送付されることで、本来の審査庁に審査請求されたものとみなす。(22条5項)
~ 再調査をすることができる旨を誤って教示しなかった場合 ~
再調査ができる処分をするときに、審査請求をすることができる旨を誤って教示しなかった場合。(22条4項)審査請求人が、処分庁に再調査の請求をしたときの効果。⇒ 再調査の請求人からの申立てで、再調査の請求書が審査庁となるべき行政庁に送付されることで、本来の審査庁に審査請求されたものとみなす。(22条5項)
※ 審査支給を選ぶか、再調査の請求を選ぶかは請求人の選択なので、申立てが必要になる。
行政不服審査法には、昭和37年の制定当初から教示の規定が置かれていた。行政事件訴訟法には、芸西16年の改正により、教示制度が導入された。
~ 取消訴訟を提起できる処分または裁決をする場合の教示事項(46条1項) ~
① 被告とすべき者、② 出訴期間、③ 法律に審査請求に対する裁決を経た後でなければ取消訴訟を提起できない旨の定めがあるときはその旨。
※ 処分を口頭でする場合は、教示義務はない。
※ もし法律に処分についての審査請求に対する裁決に対してのみ取消訴訟を適することができる旨(裁決主義)の定めがある場合は、その旨を書面で教示する必要がある。(46条2項)
~ 形式的当事者訴訟を提起できる処分または採決をする場合の教示事項 ~ (46条3項)
① 被告とすべき者、② 出訴期間
※ 利害関係者の請求による教示の規定は、行政不服審査法にはあるが、行政事件訴訟法にはない。
※ 誤った教示の救済の規定は、行政不服審査法にはあるが、行政事件訴訟法にはない。
※ 取消訴訟を提起することができる処分が口頭でされた場合、教示義務はない(行政不服審査法と同じ)し、請求による教示の仕組みもない(行政不服審査法にはある)。