27.取消訴訟

行政庁から処分を受けた者は、処分に不服があれば処分の違法性を主張して取り消すように争う裁判を取消訴訟という。
①取消訴訟として扱えるかどうかのチェック(訴えの提起~訴訟係属)②実際の裁判のやりとり(本案審理)③判決、の流れで進んで行く。


〈取消訴訟の全体像〉

訴えの提起→ 要件審理→ 訴訟係属→ 口頭弁論→ 口頭弁論終結→ 判決

※ 訴訟は裁判所による司法審査なので、違法性の審査に限られている。
※ 口頭弁論とは、双方の当事者が、裁判官の面前において、訴訟の対象について主張・立証することで攻撃防御の弁論活動をすること。
※ 本案審査とは、原告の請求に理由があるかどうかについて審理すること。(口頭弁論・口頭弁論終結)


〈取消訴訟と審査請求の関係〉

行政庁の処分取消しを求めて争うとき。
行政事件訴訟法に基づいて、取消訴訟を提起する。(裁判所による慎重な審理)
行政不服審査法に基づいて、審査請求をする。(簡易迅速)
※ 行政庁の処分に対しては、処分取消訴訟と審査請求を両方提起することも可能。その場合、裁判所では、訴訟手続きを中止することもできる。(8条3項)

行政庁Aから処分を受けたXが、処分の取消しを求めて争う場合。

1.行政不服審査法に基づき行政庁B審査請求 
2.行政事件訴訟法に基づき地方裁判所C取消訴訟を提起

(原則)1.2.のどちらにするかはXが自由に選択できる。(8条1項本文)
(例外)個別法の規定で、法律に当該処分についての審査請求に対する判決を経た後でなければ取消訴訟を提起できない旨の定めがあるときは、審査請求を前置する必要がある。(8条1項ただし書)
※ 審査請求前置の場合であっても、①審査請求があった日から3か月を経過しても採決がないとき、②処分等により生ずる著しい損害を避けるための緊急の必要があるとき、③その他採決を経ないことにつき正当な理由があるときは、審査請求の採決を経ていなくても取消訴訟を提起できる。(8条2項)


〈処分取消訴訟〉
行政庁Aから処分を受けた者が、行政庁B審査請求をして棄却採決を受けた場合、行政庁Aの処分に対して不服があってその取消しを求める時の訴訟

〈裁決取消訴訟〉
行政庁Aから処分を受けた者が、行政庁B審査請求をして棄却採決を受けた場合、行政庁Bの採決に対して不服があって、その採決の取消しを求めてする訴訟

採決取消訴訟においては、原処分の違法を理由として取消しを求めることはできない。(10条2項)(原処分主義)

※ 処分取消訴訟を提起するか、採決取消訴訟を提起するかは、自由選択
※ 個別法で、原処分に対しての出訴を許さない旨の定めがある場合(裁決主義)は、採決取消訴訟しか提起できない。この場合は、原処分の違法も採決取消訴訟で主張できる


〈要件審理〉

行政庁の処分に対して取消訴訟を提起した場合、その要件がチェックされる。
① 取消訴訟の対象か。
② 原告としてふさわしい人か。
③ 取消訴訟を行うメリットはあるか。
④ 正しい相手を被告として訴えているか。
⑤ 裁判所の管轄はあっているか。
⑥ 出訴期間を過ぎていないか。
このチェックをすることを要件審理という。訴訟要件を備えていないときは本案の審理を退けることになり、却下採決が下される。


〈処分性〉

処分取消訴訟の本案審理に入るためには、行政庁の行った行為が取消訴訟の対象となる処分といえる必要がある。このことを処分性という。処分性がなければ門前払いになり、却下判決が下される。

行政庁の処分とは、公権力の主体たるまたは公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められている。(最判昭39.10.29)
※ ①公権力の行使といえること。②具体的な法的効果が生じることの2点。

地方公共団体が、ごみ焼却場の設置のために建設会社と建築請負契約を締結する場合、抗告訴訟の対象とは言えない。(近隣住民が、裁判所に取消訴訟を提起することはできない。)
※ ごみ焼却場の設置行為は、私人との間に対等の立場に立って締結した私法上の契約によるものであり、公権力の行使により直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することを法律上認められている場合に該当するとはいえないから。

〈判例〉

~ 取消訴訟の対象となる処分性がある ~
※ 建築基準法42条2項の道路とみなす道を告示によって一括指定した行為は、処分性がある。(最判平14.1.17)←行政立法ではあるが処分性が肯定される事例。
※ 地方公共団体が設置する保育所について、その廃止を求める条例を制定する行為は性分性がある。(最判平21.11.26)
※ 弁済供託金取戻請求に対する供託官の却下処分(最大判昭45.7.15)
※ 関税定率法に基づき関税長が行う輸入禁制品に該当する旨の通知(最判昭54.12.25)
※ 食品衛生法に基づき検疫所長が行う輸入食品が食品衛生法に違反する旨の通知(最判平16.4.26)
※ 都市開発法に基づく第二種市街地再開発事業計画の決定(最判平4.11.26)
※ 労働基準監督署長が行う労災就学援護日の支給・不支給の決定(最判平15.9.4)
※ 土地区画整理法に基づく土地区画整理事業計画の決定(最大判平20.9.10)
※ 医療法の規定に基づき病院を開設しようとする者に対して行われた病院開設中止勧告(最判平17.7.15)←行政指導ではあるが処分性が肯定される事例。

~ 取消訴訟の対象となる処分性がない ~
※ 農地法に基づく農地の売払い(最大判昭46.1.20)
※ 国有財産法の普通財産の払下げ(最判昭35.7.12)
※ 交通反則金の納付の通告(最判昭57.7.15)
※ 都市計画法に基づく用途地域の指定(最判昭57.4.22)
※ 都市計画法に基づく公共施設の管理者の開発行為への同意の拒否(最判平7.3.23)
※ 通達(最判昭43.12.24)
※ 地方公共団体によるごみ焼却場の設置行為(最判昭39.10.29)
※ 公立小学校を廃止する条例を制定する行為(最判平14.4.25)
※ 公務員の採用内定の取消し(最判昭57.5.27)
※ 公立学校の儀式的行事において校長が教職員に対して発した職務命令(最判平24.2.9)


〈原告適格〉
本案審理に入るには、原告が、取消しを求める法律上の利益を有する者であることが必要(9条1項)
※ 取消訴訟の原告適格は法律上の利益を有する者であり、処分の相手方以外の者や、採決の相手方以外の者でも原告になれる。
※ 原告適格は、処分の根拠となる法令の規定の文言にのみによることなく、当該法令の趣旨、目的、当該処分において考慮されるべ利益の内容・性質を考慮することが規定されている。
※ 原告適格がなければ門前払いになり、却下判決が下される。

保健所長が食品衛生法に基づき、Xに対して行った飲食店の営業許可について、近隣の飲食店営業者Yが、営業上の利益を害するとして処分取消訴訟を提起した場合、Yは法律上の利益を有するとはいえず、原告適格は認められない。
※ 単なる営業上の利益法律上の利益とは認められず、Yには法律により保護されている利益がなく、Yは原告適格を有しない。

〈判例〉

~ 取消訴訟の原告適格あり ~
※ 新規事業への公衆浴場営業許可処分について、既存業者には原告適格あり。(最判昭37.1.19)
※ 林地開発許可処分について、生命・身体等に対する直接的被害た予想される範囲内の住民には原告適格あり。(最判平13.3.13)
※ 森林法に基づく保安林指定の解除処分について、洪水緩和や渇水予防上直接の影響を破る一定範囲の地域に居住する住民には原告適格あり。(最判昭57.9.9)
※ 総合設計許可処分について、建築物の倒壊・炎上等の被害を直接受けることが予想される範囲の建築物の居住者には原告適格があり。(最判平14.1.22)
※ 都市計画法に基づく鉄道事業認可処分について、当該事業の実施により騒音・振動等による健康または生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある周辺住民には原告適格がある。(小田急高架化訴訟:最判平元2.17)
※ 定期航空運送事業免許処分について、航空機の騒音により社会通念上著しい障害を受ける飛行場の周辺住民には原告適格がある。(最判平元2.17)
※ 自転車競技法に基づく場外車券販売施設の設置許可処分について、当該施設の周辺において医療施設を開設している者には原告適格あり。(最判平21.10.15)

~ 取消訴訟の原告適格なし ~
※ 新規業者への質屋営業許可処分について、既存業者には原告適格なし。(最判昭34.8.18)
※ 史跡指定解除処分について、学術研究者には原告適格なし。(最判平元6.20)
※ 不当景品類及び不当表示防止法に基づく公正取引委員会の処分について、一般消費者には原告適格なし。(最判昭53.3.14)
※ 地方鉄道法に基づく特別急行料金改定認可処分について、路線周辺に居住し通勤定期券を購入し特急を利用する者には原告適格なし。(最判平21.10.15)
※ 里道(りどう)の用途廃止処分について、里道の利用者には原告適格なし。(最判昭62.11.24)里道とは公道として認定されていない道路のこと。


〈狭義の訴えの利益〉
本案審理に入るには、処分を現実に取り消す必要性が認められる必要がある。このことを(狭義の)訴えの利益という。

Xは、5月1日に皇居前広場を使用したかったので使用許可申請をしたところ、不許可処分を受けたことに対して取消訴訟を提起したが、訴訟係属中にその日(5月1日)を経過した場合、不許可処分が取り消されたとしても、もう5月1日には戻れず広場を使えないから、訴えの利益は失われる。(却下判決が下される。)

〈判例〉

~ 狭義の訴えの利益が失われない ~

※ 公務員の免職処分の取消訴訟中に、本人が公職立候補した場合でも、狭義の訴えの利益は失われない。(最大判昭和¥40.4.28)
※ 公務員の免職処分の取消訴訟中に、本人が死亡した場合でも、狭義の訴えの利益は失われない。(最判昭49.12.10)
※ 公文書非公開決定処分の取消訴訟中に、公文書が書証として提出された場合でも、狭義の訴えの利益は失われない。(最判平14.2.28)(証書とは、裁判で、文書の記載内容を証拠資料とすること。)
※ 市街化調整区域内における開発許可処分の取消訴訟中に、その工事が完了した場合でも、狭義の訴えの利益は失われない。(最判平27,12.14)(市街化区域は市街化を活性化する地域のことで、開発工事も原則自由。一方、市街化調整区域は市街化を抑制する地域のことで、開発許可がないと開発工事ができない。)

~ 狭義の訴えの利益が失われる ~

※ 建築確認処分の取消訴訟中に、その工事が完成した場合、狭義の訴えの利益は失われる。(最判昭59.10.26)(建築確認は、それを受けなければ工事をすることができないという法律的効果が付与されているにすぎず、工事が完成すればその取消しを求める利益がなくなる。)
※ 市街化区域内における開発許可処分の取消訴訟中に、その工事が完了した場合、狭義の訴えの利益が失われる。(最判平5.9.10)
※ 自動車運転免許停止処分の取消訴訟中に、満1年間を無違反・無処分で経過して違反点数も消滅した場合、狭義の訴えの利益は失われる。(最判昭55.11.25)
※ 保安林解除指定処分の取消訴訟中に、代替施設の設置により保安林存続の必要性がなくなった場合、狭義の訴えの利益が失われる。(最判昭57.9.9)
※ 生活保護変更決定処分の取消訴訟中に、受給者本人が死亡した場合、狭義の訴えの利益は失われる。(最大判昭42.5.24)
※ メーデーのための皇居外苑の使用不許可処分の取消訴訟中に、当該公園使用日の経過した場合、狭義の訴えの利益は失われる。(最大判昭28.12.23)
※ 私立保育所の廃止条例の制定行為の取消訴訟中に、原告に係る保育の実施期間がすべて完了した場合、狭義の訴えの利益は失われる。(最判平21.11.26)
※ 土地収用法による明渡採決の取消訴訟中に、明渡しに関わる代執行が完了した場合は、狭義の訴えの利益は失われる。(最判昭48.3.6)


〈被告適格〉

本案審理に入る前に、正しい相手を被告としていることが求められる。被告に被告適格があるかどうか要件審理される。(11条)
※ 被告適格の条文は、無効等確認訴訟、不作為の違法確認訴訟、義務付け訴訟、差止め訴訟といった取消訴訟以外の抗告訴訟にも準用されている。(38条1項)

例1) 処分をした行政庁が国または公共団体に所属する場合、被告となるのは、当該処分をした行政庁の所属する国または公共団体

例2) 処分をした行政庁が国または公共団体に所属しない場合、被告となるのは、当該処分をした行政庁

※ A県知事がXに対して営業停止処分を行った場合、Xは、A県を被告として処分取消訴訟を提起する。


〈裁判管轄〉

本案審理に入る前に、正しい管轄裁判所に訴えているかどうか要件審理される。正しい裁判所のことを裁判管轄という。(12条)

~ 原則としての裁判管轄 ~

① 被告の普通裁判籍 または、
② 処分をした行政庁の所在地を管轄する裁判所の管轄
※ 普通裁判籍とは、どこの裁判所で裁判を扱うかにつき、事件の種類や内容にかかわらず、一般的に認められる場所のこと。
※ 取消訴訟の第一審は地方裁判所が管轄する。

~ 特別の場合における管轄の拡大 ~

※ 土地の収用鉱業権の設定その他不動産または特定の場所に係る処分の場合は、不動産または場所の所在地を管轄する裁判所
※ 処分に関し事案の処理に当たった下級行政機関がある場合処分に関し事案の処理に当たった下級行政機関の所在地を管轄する裁判所
※ 国を被告とする場合は、原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所。(特定管轄裁判所)
(被告が国の場合の普通裁判籍の所在地は東京。○○省大阪局長から処分を受けた場合は、東京地裁、または、大阪地裁に提訴できる。)

例) A県知事がXに対して営業停止処分を行った場合、Xは、A県の地方裁判所に対して、処分取消訴訟を提起する。

※ 裁判管轄の条文は、無効等確認訴訟、不作為の違法確認訴訟、義務付け訴訟、差止め訴訟といった取消訴訟以外の抗告訴訟にも準用されている。(38条1項)


〈出訴期間〉
処分には不可争力があるため、本案審理に入るには、法定の期間内に訴えていることも必要。この期間のことを出訴期間という。(14条)
※ 不可争力には、一定の期間を過ぎたら私人からは争えなくなる効力のこと。

~ 主観的期間 ~
・ 処分取消訴訟は、処分があったことを知った日から6か月を経過したときは、提起することができない(正当な理由があるときは除く)
⇔ 行政不服審査法の審査請求期間の3か月と比較。

~ 客観的期間 ~
・ 処分取消訴訟は、処分の日から1年を経過したときは、提起することができない(正当な理由があるときは除く)

~ 審査請求をしている場合 ~
・ 処分につき審査請求があった場合、処分取消訴訟は、その審査請求をした者については、これに対する採決があったことを知った日から6か月を経過したときまたは当該採決の日から1年を経過したときは、提起することができない。(正当な理由があるときは除く)


〈本案審理〉

本案審理について、行政事件訴訟法にはあまり多くの規定が置かれておらず、民事訴訟の審理手続に関するルールに従わせている。

行政事件訴訟に関し、行政事件訴訟法に定めがない事項については、民事訴訟の例によるものとされている。(7条)

~ 民事訴訟のルールによるもの ~

※ 訴訟を提起するかどうかは当事者の判断に委ねられる(処分権主義)。
※ 訴訟の提起は、訴状裁判所に提出して行う。
 民事訴訟法134条1項では、訴えの提起は訴状を裁判所に提出してしなければならないこと、同条2項では、訴状には、①当事者および法定代理人、②請求の趣旨および原因を記載しなければならない。
※ 訴訟は口頭の陳述によって審理が進む(口頭主義)。
※ 原則として弁護士でなければ訴訟代理人となることができない。
※ 裁判の基礎となる資料の収集当事者権能であり責任とされる(弁論主義)

~ 行政事件訴訟法独自のルールによるもの ~

※ 職権証拠調べ(24条)
 裁判所は、必要があると認めるときは、職権で、証拠調べをすることができる。(その証拠調べの結果については当事者の意見をきかなければならない。)


〈法律上の利益〉

取消訴訟において、自分の法律上の利益に関係のない違法理由として取消しを求めることはできない。(10条1項)請求に理由がないときは、棄却される。(本案審理の中で、自分の法律上の利益と関係のない話をしているとき)


〈訴訟参加〉

処分取消訴訟では、訴訟の結果により権利を害される第三者処分をした行政庁以外の行政庁を、訴訟参加させる仕組みが設けられている。(22条、23条)
※ 第三者の訴訟参加や行政庁の訴訟参加の条文は、無効等確認訴訟、不作為の違法確認訴訟、義務付け訴訟、差止め訴訟といった取消訴訟以外の抗告訴訟にも準用されている。(38条1項)

例) 行政庁Aから処分を受けたXが取消訴訟を提起した場合。
※ 行政庁Bが訴訟参加するには…
 A以外の行政庁が訴訟参加するには、裁判所は、申立てまたは職権で訴訟に参加させることができる。(23条)
※ 第三者Yが訴訟参加するには…
 訴訟の結果により権利を害される第三者Yが訴訟参加するには、裁判所は、申立てまたは職権で訴訟に参加させることができる。


〈再審の訴え〉

取消判決により権利を害される第三者に、自己の責めに帰することができない理由により訴訟に参加することができなかったため判決に影響を及ぼすべき攻撃防御方法を提出することができなかった場合、当該第三者は、確定判決に対し、再審の訴えをもって、不服の申立てをすることができる。(34条1項)
※ 再審の訴えは、確定判決を知った日から30日以内に提起しなければならない。(34条2項)また、判決が確定した日から1年を経過したときは、提起することができない。(34条4項)


行政庁の処分に対し、取消しを求めること損害の賠償を求めることは別の訴訟形態とされているが、2つの訴訟をまとめて行ったり、途中で別の訴訟に変更したりすることも可能。

〈訴えの併合〉
2つ以上の訴えを1つにすることを訴えの併合という。(16条~19条)
※ 訴えの併合、移送、変更の条文は、無効等確認訴訟、義務付け訴訟、差止め訴訟といった取消訴訟以外の抗告訴訟にも準用されている。(38条1項)

Xが行政庁Aから営業停止処分を受けた場合、Xはその処分の取消しを求める訴訟とそれにより生じた損害の賠償を求める訴訟を併合して提起した。

※ 取消訴訟には、関連請求に係る訴えを併合して提起できる。(取消訴訟国家賠償法2つの訴えの併合提起。)
※ 訴訟開始時から併合して提起することを原始的併合(16条1項)といい、取消訴訟係属中に、追加して併合提起することを追加的併合(19条1項)という。


〈移送〉
行政庁の処分に対する取消訴訟と損害賠償請求などの関連請求に係る訴訟とが別々の裁判所に係属する場合、関連請求に係る訴訟の係属する裁判所は、申立てによりまたは職権で、その訴訟を取消訴訟の係属する裁判所に移送することができる。


〈訴えの変更〉
原告の申立てにより、請求の内容を変更することが認められている。(21条)

Xが行政庁Aから営業停止処分を受けた場合を例に、処分取消訴訟を提起したが、処分の取消しを求めることはやめて、この処分によって生じた損害の賠償請求に変更する場合。(取消訴訟 ⇒ 国家賠償請求)
※ 訴えの変更には、請求の基礎に変更がないこと、口頭弁論の終結に至るまでであること、原告の申立てによることの要件を満たさないとできない。


〈判決〉

裁判所が訴訟に対して下した判断結果のことを判決という。
裁判所は、原告・被告お互いの主張を踏まえ、判決を出すのに十分な弁論を終えたと判断したら、口頭弁論を終結させ、判決言渡期日を指定して、その日に判決を言い渡す。

〈判決の種類〉

取消訴訟が、その形式的要件を欠き不適法であるとして、本案審理を拒否することを、却下判決という。(門前払いのイメージ)

本案審理の結果原告の請求に理由がないとして、取消しの判断を避けることを、棄却判決という。(原告の負けというイメージ)

本案審理の結果原告の請求に理由があるとして、取消を認める判断をすること認容判決という。(原告の勝ちというイメージ)


〈事情判決〉

処分が違法であっても、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合、裁判所は、処分を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときに請求を棄却することができる。(31条1項前段)。この場合、判決の主文において、処分が違法であることを宣言しなければならない。(31条1項後段)

※ 事情判決は取消訴訟についてのルールであって、無効等確認訴訟には準用されない。


〈判決の効力〉

① 取消判決により、処分の効力は失われ、最初からなかったことになる効力を形成力という。

② 形成力が第三者にも及ぶことを第三者効という。

③ 判決が確定することによって、同一の事項について確定判決と矛盾する主張・判断を後の訴訟において争うことができなくなる効力既判力という。

※ 判決の拘束力の条文は、無効等確認訴訟、不作為の違法確認訴訟、義務付け訴訟、差止め訴訟といった取消訴訟以外の抗告訴訟にも準用される。(38条1項)

※ 形成力や拘束力は認容判決のときの効力だが、既判力は、認容判決にも棄却判決にも認められる効力


〈拘束力〉

申請を却下・棄却した処分が判決により取り消された場合や、申請に基づいてした処分が判決により手続きに違法があることを理由として取り消された場合、その処分をした行政庁は、判決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分をしなければならない。(33条2項・3項)

※ 申請拒否処分の取消しの判決が確定した場合、処分庁は判断の趣旨に反する処分をすることはできないが、裁判で争われなかった別の理由から再度申請を拒否する処分をすることはできる。


〈執行停止〉

行政事件訴訟法に定められている執行停止は、処分の効力の停止、処分の執行の停止、手続きの続行の停止の相称。

① 処分によって生じる効力を一時的に停止し、処分がされてなかった状態を作り出すことを処分の効力の停止という。(営業停止の処分の効力を暫定的に停止し、営業できる状態を回復する)

② 処分の内容の実現のための実行力を停止させることを処分の執行の停止という。(建築物を撤去するよう命じられたときの代執行を停止する)

③ 処分を前提として行われる後続処分をさせないことを手続きの続行の停止という。(土地収用法に基づく事業認定を前提として行われる収用手続きを停止する。)

行政庁Aから営業停止処分を受けたXが取消訴訟を提起する場合。Xが、訴訟中、営業停止処分をとめておきたとき。

~ 執行停止の要件(25条2項・4項)~

※ 取消訴訟と、執行停止の申立てをしたとき。
※ 処分等による重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき
※ 本案について理由があるとき。(ないとみえるときはできない。)
※ 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないとき(あるときはできない。)

※ 取消訴訟を提起しないで、執行停止だけを申立てることはできない。
※ 行政不服審査法のときと違い、裁判所が職権で執行停止することは認められていない。


〈内閣総理大臣の異議〉

内閣総理大臣は、執行停止の申立てがあった場合、理由を付して、執行停止決定を行おうとする裁判所に対し異議を述べることができる。執行停止の決定があった後においても同様。(27条1項)

内閣総理大臣の異議があった場合裁判所は、執行停止をすることができず、また、すでに執行停止の決定をしているときはこれを取り消さなければならない。(27条4項)

※ 行政庁の処分について、行政が判断する行政不服審査法の場合は、内閣総理大臣の異議の制度はないが、司法が判断する行政事件訴訟法では認められている。
※ 内閣総理大臣は、異議を述べたときは、次の常会(通常国会)に報告しなければならない。(27条6項)


〈行政不服審査法と行政事件訴訟法の比較〉

行政不服審査法(処分に対して上級行政庁に審査請求)
※ 申し立てによる執行停止は、できる。
※ 職権による執行停止は、できる。
※ 内閣総理団人の異議の制度は、ない

行政事件訴訟法(裁判所に処分取消訴訟を提起)
※ 申し立てによる執行停止は、できる。
※ 職権による執行停止は、できない。
※ 内閣総理大臣の異議の制度は、ある。

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