対等な当事者間の権利利益および法律関係をめぐる訴訟として用意されたのが当事者訴訟。当事者訴訟には、形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟がある。
⇔ 抗告訴訟は、公権力の行使や不作為の違法性を争うもの。
〈形式的当事者訴訟〉
形式的当事者訴訟は、当事者間の法律関係を確認しまたは形成する処分または採決に関する訴訟で、法令の規定によりその法律関係の当事者一方を被告とするもの。(4条前段)
A県の収用委員会から土地を収用される処分を受けたXが、当該土地収用の処分に対しては不服はないものの、支払われる保証金の額に不服があり、企業者Bに対してその増額を求める場合は、企業者Bを被告として、保証金の増額を求める訴訟を提起する。(土地収用法133条3項が企業者を被告とする旨を定めている。)
〈実質的当事者訴訟〉
実質的当事者訴訟は、公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟を言う。(4条後段)
例)無効な懲戒免職処分を受けた公務員による地位確認訴訟、日本国籍を有することの確認訴訟、在外国民に選挙権があることの確認訴訟、憲法に基づく損失補償請求訴訟。
〈拘束力と第三者〉
取消訴訟における拘束力の規定(33条1項)は、当事者訴訟にも準用されている。(41条1項)
取消訴訟における第三者の規定(32条1項)は当事者訴訟には準用されていない。
〈仮処分〉
行政事件訴訟に関し、行政事件訴訟法に定めがない事項については、民事訴訟の例による(7条)。行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については、民事保全法に規定する仮処分をすることができない。(44条)
当事者訴訟の対象となる行為のように、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に該当しない場合には、民事保全法の仮処分をすることができる。
〈民衆訴訟〉
国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいう。(5条)
例) 公職選挙法で認められている選挙無効訴訟、地方自治法で認められている住民訴訟
〈機関訴訟〉
国または公共団体の機関相互における権限の存否またはその行使に関する紛争についての訴訟を言う(6条)。
例) 地方自治法で認められている総務大臣の都道府県知事に対する関与があった場合にその取消しを求めて都道府県知事が提起する訴訟。