8. 取締役

会社は、会社の経営を担う取締役最低1人以上は置く必要がある。
公開会社は、取締役会の設置も義務付けられている。
取締役会非設置会社の取締役は1人以上いればよい


〈取締役〉

取締役会設置会社の取締役は、会社の業務を執行する必要的機関(348条1項)

取締役会設置会社の取締役は、取締役会の一職員で、取締役会の職務として会社の業務執行の決定と取締役の職務執行を監督する(362条1項・2項)

~ 公開会社Xの取締役を選任する場合 ~
※ 取締役の選任株主総会決議によって行う。(329条1項)
※ 公開会社の場合、取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができない。(331条2項)

※ X社では、最低3人以上の取締役が必要(331条5条)
※ X社では、取締役は、X社の株主の中から選任しなくてはならないという資格制限を定款で定めることはできない(331条2項)(公開会社だけのルール)
※ 法人のA社が取締役に就任することはできない(331条1項1号)
※ 成年被後見人のAが取締役に就任することはできる。(Aの成年後見人が、Aの同意を得て、Aに代わって就任の承諾をしなければならない。)
※ 被保佐人のAが取締役に就任することはできる。(Aの保佐人の同意を得なければならない。)
※ 選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株式総会の終結の時までが取締役の任期となる(332条1項)(定款または株主総会決議によって任期を短縮することができ、また、非公開会社の場合は、定款に定めることで、10年まで伸長できる。(332条1項ただし書、332条2項)

~ 公開会社X社の取締役の解任する場合 ~
※ 取締役の解任株主総会決議によって行う。(339条1項)
※ 不正行為をした取締役を解任する旨の議決が株主総会において否決された場合、株主(公開会社の場合、6か月保有かつ3%以上保有)から、裁判所に対し、取締役解任の訴えを提起することができる(854条1項)

※ 解任された取締役は、新たに選任された取締役が就任するまで、なお取締役としての権利義務を有することができない。(⇔ 任期満了辞任により退任している場合は、新たに選任された取締役が就任するまで、なお取締役としての権利義務を有する:346条1項)
※ 裁判所は、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより、一時取締役の職務を行うべき者を選任することができる(346条2項)


〈取締役会〉

取締役会は、すべての取締役で組織される(362条1項)
※ 取締役会は、会社の業務執行の決定取締役の職務の執行の監督代表取締役の選任・解任といった職務を行う(362条2項)

取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役過半数が出席し、その過半数の賛成で行われる(369条1項)(取締役会では、代理人による議決権行使や、特別利害関係人による議決権行使は認められていない。)

公開会社で、取締役会設置会社であるX社が、取締役会の招集・議決する場合。

※ 重要な財産の処分譲り受け多額の借財支店その他の重要な組織の設置変更、廃止などが、取締役会で決定すべき事項の例として挙げられている(362条4項)(これらの事項の決定は取締役会で行うものであり、その決定を取締役に委任することはできない。)
※ 取締役会は、各取締役招集する(366条1項)(取締役会を招集する取締役を定款または取締役会で定めたときは、その取締役が招集する。)
※ 取締役会の招集1週間前までに通知をすればよく、取締役全員の同意(監査役設置会社のときは監査役も)があれば招集手続は省略できる(368条1項2項)
※ 取締役全員の同意があれば、取締役の提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨定款で定めることができる(370条)(株主総会のときは会社法上みなされるが、取締役会のときは定款で全員同意によるみなし決議ができる旨を定める必要がある。)
※ 取締役会決議に参加した取締役のうち、議事録に異議をとどめなかった者は、決議に賛成したと推定される(369条5項)


取締役会の議事については、議事録を作成する必要がある(369条3項)
※ 監査役設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社の場合、株主は、裁判所の許可を得て、議事録の閲覧を請求できる(371条3項)


〈代表取締役〉

代表取締役は、会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する機関(349条4項)(一般に会社の社長)
※ 取締役会設置会社では、①代表取締役、②代表取締役以外の取締役で取締役会決議により会社の業務を執行する取締役として選定された者、が会社の業務を執行する(363条1項)
※ 会社は、代表取締役の権限に制限を加えることができる。その制限は、善意の第三者に対抗することはできない(349条5項)

~ 取締役会設置会社の代表取締役の選任権限 ~

代表取締役は、取締役の中から取締役会決議で選ぶ(362条2項3号、3項)

代表取締役は、代表権業務執行権をもつ。(他の取締役にはない取締役会決議で会社の業務を執行する取締役として選定された者は、業務執行権をもつ

~ 取締役会設置会社の代表取締役の選任権限 ~

取締役の各自代表権業務執行権をもつ。
※ 取締役が3人いれば3人とも会社を代表できる。
※ 定款、定款規定に基づく互選株主総会決議により代表取締役を選定し、代表行為代表取締役に行わせてもよい。

代表取締役を互選や株主総会決議で選定した場合代表取締役は、代表権と業務執行権の両方をもつが、他の取締役には、代表権がなくなり業務執行権のみをもつようになる。


〈取締役の報酬〉

取締役の報酬等について、その額が確定しているものはその額、その額が確定していないものは具体的な算定方法は、定款または株主総会決議によって定める(361条1項1号・2号)(報酬等には、報酬賞与他の職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益を含める。)


〈特別取締役〉

取締役6人以上いて、うち1人以上社外取締役の会社の場合、取締役会から委任された一定事項の決定特別取締役による取締役会で行うことができる(373条1項)(迅速な業務執行の意思決定を可能にするため)(指名委員会等設置会社の場合、特別取締役を設置できない)
※ 特別取締役による取締役会で決定ができる事項の対象となるのは、①重要な財産の処分および譲り受け、②多額の借財、の2つ。
※ 特別取締役による議決の定めがあるときは、その旨、特別取締役の氏名、取締役のうち社外取締役であるものについては社外取締役である旨を登記する必要がある。(911条3項)


〈社外取締役〉

外部の視点から企業経営のチェックするために社外取締役がある。
監査役会設置会社公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る)であって金融商品取引法24条1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは、社外取締役置かなければならない(327条の2)
※ 社外取締役になるには、当該会社またはその子会社の業務執行取締等でなく、かつ、その就任の前10年間当該会社またはその子会社の業務執行取締役等であったことがないことなどの要件がある(2条15項)


〈取締役の競業避止義務〉

取締役が、自分自身や第三者のために会社の事業の部類に属する取引を行う場合、一定の規制がかけられている。

取締役会設置会社のX社の取締役Aが競合取引をする場合。
※ 取締役会承認を得てする必要がある。(356条1項1号、365条1項)
※ 競合取引をした後、取締役会報告する必要がある(365条2項)
※ 承認を得ないで行われた競業取引によって取締役が得た利益の額は、会社に生じた損害と推定される(423条2項)
※ 取締役会非設置会社の場合、承認機関は株主総会になる。利益相反の場合も同じ。


〈取締役の利益相反取引〉

取締役が、会社と利益が相反する取引をする場合、一定の規制がかけられている。(取締役が自己または第三者のために会社と取引を行う「直接取引」、取締役以外の第三者との間で会社が取引を行うことによって取締役の利益になる「間接取引」などが、利益相反取引になる。)

取締役会設置会社X社の取締役AがX社に高値で土地を売る場合。
※ 取締役会承認を得る必要がある。(356条1項2号、365条1項)
※ 取締役会報告する必要がある。(365条2項)
※ 取締役の任務懈怠により会社に損害が生じたときは、取締役はそれを賠償する責任がある(423条1項)
(自己のために直接取引をしている取締役Aは、仮に過失がないことを証明できても免責できない。【無過失責任】総株主の同意による免責はできるが、株主総会の特別決議による一部免責はできない。)
A以外の他の取締役は、過失があることは推定されているが、もし過失がないことを証明できれば、免責できる【過失責任】会社がAと取引することに賛成した取締役Bや、Aの利益相反取引の承認決議で賛成した取締役Cは、任務を怠ったものと推定される。決議に賛成した取締役Dは、議事録に異議をとどめていないのであれば、決議に賛成したものと推定される。Aと異なり、BCDは任務を怠っていなかったことを証明すれば免責される。)


〈取締役の任務懈怠責任〉

取締役は、その任務を怠ったときは、会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。(423条1項)
取締役の会社に対する任務を怠ったときの責任は、総株主の同意により免責することができる。(424条)


〈株主代表訴訟〉

株主代表訴訟とは、会社が取締役の責任を追及しない場合は、株主が、会社に代わって取締役の責任を追及する訴訟のこと。(847条1項)
株主から会社に対して取締役の責任を追及する訴訟を提起するよう請求し、それでも60日以内に会社が提訴しないときは、株主自ら提訴することができる。(847条3項)
(公開会社では、原則として6か月前から引き続き株式を有する株主であることが必要:847条1項・2項)
(期間の経過により会社に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合は、株主は、直ちに提訴できる:847条5項)
(会社が、取締役の会社に対する責任を追及する訴えに係る訴訟において和解をする場合、監査役設置会社にあっては各監査役、監査等委員会設置会社にあっては各監査等委員会、指名委員会設置会社にあっては各監査委員の同意を得なければならない。:849条の2)


〈取締役の第三者に対する責任〉

取締役は、その職務を行うについて悪意または重大な過失があったときは、これによって第三者に生じた損害賠償する責任を負う。(429条1項)
第三者に対する責任なので、会社に対する責任と異なり、総株主の同意で免責することはできない

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