〈監査役〉
監査役は、取締役の職務の執行を監査する。(381条1項)
公開会社で取締役会設置会社であるX社の監査役の選任・解任
※ 監査役の選任は、株主総会決議で行う。(329条1項)
(取締役が監査役の選任に関する議案を株主総会に提出する場合、監査役の同意を得る必要がある。複数監査役がいるときはその過半数の同意が必要:343条1項)
(監査役は、取締役に対して、監査役の選任を株主総会の目的とすることまたは監査役の選任に関する議案を株主総会に提出することを請求することができる。:343条2項)
※ 選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までが監査役の任期となる:336条1項)
(非公開会社の場合は、定款に定めることで任期を10年まで伸長できる。:336条2項)
※ 監査役の解任は、株主総会特別決議で行う。(339条1項、309条2項7号)
(不正行為をした監査役を解任する旨の議案が株主総会において否決された場合、株主から、裁判所に対し、監査役解任の訴えを提起できる制度もある。ただし、公開会社の場合、6か月保有かつ3%以上の株主であることが必要。:854条)
〈会計参与〉
会計参与は、取締役と共同して、計算書類等を作成する。(374条1項)
※ 会計参与は、公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人でなければならない(333条1項)
※ 会社の規模や機関設計にかかわらず、定款で、任意に設置できる(326条2項)
※ 会計参与に取締役会出席義務があるのは、計算書類等について取締役会の承認が必要な場合など一定の場合のみ(376条1項)
〈会計監査人〉
会計監査人は、計算書類等を監査する(396条1項)
※ 会計監査人は、公認会計士、監査法人でなければならない(337条1項)
※ 監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社、大会社は、会計監査人の設置が義務付けられている(327条5項、328条1項、2項)(大会社とは、資本金5億円以上または負債200億円以上の株式会社のこと。)
※ 設置が義務付けられているのは、会計監査人であり、会計参与ではない。
〈選任・解任のまとめ〉
取締役、監査役、会計参与、会計監査人の選任は、いずれも株主総会決議で行う。
取締役、会計参与、会計監査人の解任は、株主総会決議で行うが、監査役の解任だけは、株主総会特別決議で行う。
取締役と会計参与の任期は2年。監査役の任期は4年。会計監査人の任期は1年。
〈指名委員会等設置会社〉
指名委員会等設置会社は、指名委員会、監査委員会、報酬委員会の3委員会を設置する会社。
※ 指名委員会は、株主総会に提出する取締役の選任・解任に関する議案の内容の決定などを行う委員会。
※ 監査委員会は、取締役の職務執行の監査、監査報告書の作成などを行う委員会。
※ 報酬委員会は、取締役の報酬の内容の決定などを行う委員会。
〈監査等委員会設置会社〉
監査等委員会設置会社とは、監査委員会により取締役の業務執行を監査する会社。(平成26年改正、平成27年5月施行により導入された仕組み)
従来、大会社である公開会社は、監査役会を設置しなければならず、監査役会を置かなくてよいのは委員会設置会社(現在の指名委員会等設置会社)だけだったので、多くの会社は監査役会の設置を選択していた。
委員会設置会社では、指名委員会、報酬委員会、監査委員会の3委員会を置く必要があり、各委員会の委員には社外取締役が過半数必要であるため、社外の人に人事や報酬を委ねることに抵抗があった。監査等委員会設置会社の場合、監査等委員会以外の委員会の設置は不要なので、より選択しやすくなっている。
※ 監査等委員会設置会社の監査等委員である取締役は株主総会決議で選任するが、それ以外の取締役とは区別して選任する。(329条2項)
※ 監査等委員会は、監査等委員となる取締役3名以上で組織し、その過半数は社外取締役とする必要がある(331条6項)
※ 監査等委員である取締役の任期は2年、それ以外の取締役の任期は1年(332条1項・3項)
※ 監査等委員会設置会社は、会計監査人を置く必要がある(327条5項)(指名委員会等設置会社でも、会計監査人の設置は義務付けられている:327条5項)
※ 監査等委員会設置会社は、監査役を置いてはならない(327条4項)(指名委員会等設置会社でも監査役の設置は禁止されている:327条4号)
※ 会社を代表するのは、代表取締役。
〈監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社の比較〉
指名委員会等設置会社は、指名委員会、報酬委員会、監査委員会をの3委員会を設置しなければならないが、監査等委員会設置会社では、監査等委員会だけでよい。
各委員会の委員は、いずれも取締役3名以上で構成し、その過半数は社外取締役でなければならない。
会計監査人の設置は、いずれも義務。
監査役の設置は、いずれも不可。
会社の代表は、いずれも代表取締役。(指名委員会等設置会社の場合は、執行役という概念もある。)